とりあえず、祐一を部屋に連れてきた。
「へえ、こんな部屋に住んでるんだ・・・」
とキョロキョロする祐一を無理矢理ソファーに座らせ、舞が出してくれたお茶にも手を出させず、付き合う気があるのかないのか問い詰めた。 Continue reading “7/23 (土) 1:00 嫌な予感”
小説の部屋
とりあえず、祐一を部屋に連れてきた。
「へえ、こんな部屋に住んでるんだ・・・」
とキョロキョロする祐一を無理矢理ソファーに座らせ、舞が出してくれたお茶にも手を出させず、付き合う気があるのかないのか問い詰めた。 Continue reading “7/23 (土) 1:00 嫌な予感”
そしてついに、例の某VIPと祐一、そして有紗さんとで、食事をすることになった。
海の中の天然水族館とも言える迎賓館で、祐一は緊張を見せることなく、料理よりも会話を楽しんでいるようだった・・・しかし、相手は何故か、有紗さん。僕の印象では気が強く主導権を握りたがるはずだった王女は、一転、借りてきた猫のように、ただただ祐一を眺めては微笑むのみ。そこで有紗さんが気を利かせて代わりにあれこれ質問していたのだが、だんだんと二人の世界ができあがってしまい、僕は完全に蚊帳の外に追いやられてしまった。
“お話しにならなくてよろしいのですか?”
仕方なく、食事が終わるのと同時に、僕は王女をリビングへとお誘いした。
“いいんです。私には単に憧れの人だったんです。こんなことは初めてですわ”
そしてまたため息をつく様子を見ると、どうしたものかと考えざるを得なくなる。有紗さんだって、王女が祐一を好いていることは十分承知しているはずなのに、もう祐一しか目に入っていない。しかし一方の王女もまた、その光景から目を離さずにいる。
“有紗さんとは親しくされているのですか?”
“はい。恋人と別れて落ち込んでいましたから、これもよかったのではないでしょうか。これまでの経緯も聞いていましたので… 絶対そんなことはないはずだと思いますのに自分ばかり責めていたので、新しい恋をすることをお勧めしましたわ。・・・あら、殿下は前の恋人について何かご存じでいらしたのですか?”
ええ、まあ、少々。・・・そうか、有紗さんは自分を責めていたのか。でも次のターゲットがまた僕の友人だというのは気にかかる。・・・もしや、
“今回祐一に会いたかったのは、王女よりも有紗さんのほうだったのではありませんか?”
“そうかもしれませんね。私がファンであるのは事実ですし、お目にかかりたいとは話したのですが、お忙しいようなら結構ですと伝えましたのに・・・きっとそうなのですわ。先日議場でお見かけしたとかで、そのときに自覚したのでしょうね”
有紗さんは確信犯だったというわけか・・・。祐一には本当に付き合う気があるのだろうか?
“ミュージシャンと王女の恋愛というのも、なかなか素敵ではありませんか?ミュージシャンとしての祐一さんにも箔がつきますわ。ここは、お互いの友人同士、温かく見守ることにしませんか?”
いや、その・・・。友人の恋愛に口出しをするほど子どもではないけれど、有紗さんはあまり薦めたくない、と思う。
後で事情を知った結城が、大いに怒っていた。
「いいや、お前はいつもより元気そうだ。そんなヤツらは放っておけ」
とは言え、竹内は前にも増してあれこれ手を施してくる。・・・殿下に何かあれば私の責任です、とか言って。それでも、竹内の場合はあくまでもさりげなく、そしてわざわざ口にすることなくやってくれるからまだいい。 Continue reading “7/21 (木) 19:00 優先順位”
議会は大揉めに揉め、議場内が騒然としてしまったために、一旦休会となった。・・・こういうとき、発言者としては王宮派でありながらも、皇太子としてはできるだけ中立の立場で、議会を円滑に進めなくてはならない。・・・こんな無様な様子をこれ以上国民のみなさんにはお見せできない。 Continue reading “7/20 (水) 16:00 侮辱”
有紗さんが教えてくれた名前は某国の王女のもので、ことは難しくなりそうだった。彼女には僕も二度ほどお目にかかったことがあり、やや年上で気が強そうな印象を受けた。その彼女と祐一は、悪いけど合いそうにない。しかし、相手国のことを思うと断れない。そしてもう一つ、そうなると舞に断りを入れなくてはならなくなる。それとも・・・、
「一緒に来る?」
一応言ってはみたものの、舞は固まってしまって、すぐには返事をしてくれなかった。 Continue reading “7/19 (火) 23:30 誘い”
「沢渡の前で余計なことを言うなよな!」
結城はまだご機嫌斜めの様子だ。・・・まったく、沢渡くんのことを応援しているのかしていないのかどっちなんだ。どうも結城は素直じゃない。この様子では相談できないな・・・。 Continue reading “7/18 (月) 23:30 聞いてみよう”
今は役に入り込まなければならないときだと思って、深雪とは特別な話はしていない。彼女のことで浮かれているわけにはいかない・・・それは仕事の面でも同じだ。
と思っていたら殿下からお誘いをいただき、結城と三人で夜景が綺麗なレストランへ出かけることになった。舞さんはお誘いしなくていいのですか?と殿下に伺ったら、今日は男同士の集まりだ、とおっしゃった。 Continue reading “7/17 (日) 22:30 是非”
全国大会まであと2週間。今日から部活が再開するというのは前から分かっていたはずなのに、昨夜の仕事が終わったとたんに急に不安が押し寄せてきたので、朝霧の部屋を訪れた。しかし、彼もヴァイオリンのコンクールが近づいていてかなりナーバスになっている、そして僕は仕事のまっただ中。試験のために部活が休みだったので、お互い集中力が途切れてしまっていることがわかっただけだった。 Continue reading “7/16 (土) 16:15 部活再開”
しょうがないから、加藤に聞いてみた。
「僕の意思表示は普通?過剰?それとも足りない?」
「仕事でのことは私の口からは申し上げられませんが、側近の立場からは、足りない、と申し上げるべきでしょうね。ただ私には、沢渡さんのコンディションはおっしゃっていただかなくても分かりますので、このままでもよろしいかと思いますが」 Continue reading “7/15 (金) 23:30 出方”
「沢渡さん、もう日付が変わってしまいましたよ」
昨夜、何とか深雪が理解を示してくれたのはよかったけど、当初の計画が狂ってしまっていた・・・柄にもなく、意外と残念がるのだ、あの大男は。 Continue reading “7/14 (木) 23:30 誕生日”