9/1 (木) 11:30 財務長官就任

2学期の始業式。

朝霧先輩が特別に1曲披露してくれたことにも感激したけど、このあといよいよか、と思うと、息もできないくらいにドキドキしてきた。

「今日はみなさんにお知らせがありますので、しばらく待機していてください」

先生が話すと、ステージの上ではスクリーンが下ろされたり、マイクスタンドの位置が変えられたりと準備が行われ、講堂にいる生徒たちは何事かとざわめき立っている。・・・間もなく会見が始まる時間。希さんはどんな顔で登場するのかな?

そしてステージに学長と共に結城さんが登場すると、その存在感からか、自然と辺りは静まり始めた。

「私はホーンスタッド国王宮顧問の結城と申します。今日はこちらに在籍している沢渡希のことで報告すべきことがあり、足を運ばせていただきました」

結城さんは希さんの経歴を簡単に説明される。すると、コソコソした話し声があちこちから聞こえてくる。

「ねえ、深雪は知ってた?」

隣の若菜も囁いてくる。・・・うん、まあ、とここは軽く受け流しておくことにして。

そのときスクリーンに会見場の模様が映された。いよいよ始まるらしい。結城さんが“静かに”と声をかける。

スクリーンの中では陛下が希さんを紹介され、辺りがフラッシュで真っ白になった。

「ただいまご紹介にあずかりました沢渡です。・・・」

カッコイイ!この間もスーツ姿は見せてもらったけっれど、今日は一段と凛々しくて、自信たっぷりに話す様子がとてつもなくカッコよくて!・・・こんな素敵な人が私のことだけを好きでいてくれるなんて、信じられない。けど、周りには内緒にしなきゃいけないのよね。

希さんは記者からの質問に丁寧に答えていた・・・みたいだけど、私には政治のことはよく分からないし、あまりのカッコよさにドキドキしてしまって言葉が耳をすり抜けていくし、にやけてしまうのを抑えるだけでいっぱいいっぱい。いつの間にか会見は終わってしまったみたい。

「凄いよね~、沢渡先輩ってホントにカッコイイ!いいな~、深雪は部活で共演できて」

でも、教室への帰り道若菜が発した一言に、一気に現実に引き戻された。

「もうすぐ文化祭だよ!みんなが注目してるんだから、何とかしなきゃ」

希さんはこれからあまり学校に来られないかもしれないと言ってた。そのときにはきちんと演技できるようにしておかないと、飽きられてしまう!・・・けど、あんなにカッコイイところを見せられちゃったら、たまらないよ。

「ピンチ!若菜、どうしよう」

「何よ、にやけてみたり落ち込んでみたり。どっちなのよ」

・・・私は完全に舞い上がってしまっています。

 

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