9/9 (金) 22:00 遅めの夕食

仕事的には相変わらずマスコミの取材を受け、議会の後始末をし、来週からしばしオフをとられる殿下からその間の仕事の引き継ぎをして、と多忙を極めている。それでも考えてしまうのは深雪のこと。役作りはうまくいっているのかな?

一方、目の前では、来月に結婚を控えたカップルが微笑み合っていらっしゃる。

「でも折角おいしいものを食べて気持ちをリフレッシュしようという場を設けたのに、どうして沢渡くんの隣が結城なんだろうね。深雪ちゃんがいてくれればダブルデートという感じでもっと楽しめたのに」

「うるさいな、お前は!お前のほうこそ、折角舞さんがいるのに、何でイチイチ俺に突っかかってくるんだよ!」

・・・また始まった。ホントにこれ、どうにかならないのかな?

「別に突っかかってないよ。舞も彼女と話したがっているんだ」

「・・・強いて言うなら、俺も深雪ちゃんと話をしたい」

あれ?珍しく意気投合?・・・そして三人揃って僕のほうを見る。

「ちょっと待ってくださいよ。今彼女は文化祭での公演の準備が大変で、僕でさえ距離を置いているくらいなんです。だから、そっとしておいてあげてください」

「え?距離を置いているってどういうこと?」

僕はこれまでの経緯を簡単に説明する。でも最近気になっているのは、文化祭の公演は『光と影』だけではない、全国大会で上演した『新たなる一歩』もあるということ。こちらは打って変わって兄妹がとても仲良しな雰囲気を出さなければならないので、あまり距離を置きすぎると問題が生じる。

「深雪ちゃんが沢渡くんのことを本気で怖がっているなら、変に練習しすぎないほうがいいんじゃないの?」

「そうも思ったのですが、舞台の上に立つ以上、演技で表現したいと言い切ったものですから」

「そうなんだ。沢渡くんも、以前は本気とも演技ともつかない表現をしていたけれど、全国大会からは変わったよね。今だって、深雪ちゃんを本気で泣かせるくらい怖い悪魔を演じているようには見えないからね」

「今回は、現実離れしているので逆にやりやすいんですよ。でも確かに、今は小宮山を演じるときにも客観的に役を見られるようになりました。・・・地区予選の時はひどかったですか?」

ああ・・・、と殿下は舞さんと顔を見合わせられ、・・・やっぱりひどかったのだと実感する。でも、僕が役だと割り切れるようになったのだから、深雪もきっとできるようになると思う。だから今は少し我慢するしかない。・・・にしても、

「どうしてそんなに深雪のことに興味津々なのですか?」

「・・・そうだよね~、どうして結城は深雪ちゃんに嫉妬しないのかな?」

「うるさいな、お前はイチイチ・・・」

ああ・・・、また始まってしまった。

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