9/8 (木) 15:30 後任

今日は6限目から学校に行き、それから部室に移動。朝霧はリサイタルに備えてリハーサルを繰り返しているため欠席。演劇部は、文化祭の初日と3日目に全国大会で優勝した『新たなる一歩』を、2日目には新作『光と影』を上演するのだが、朝霧は新作には出演しない。このところ練習がもっぱら『光と影』に当てられているのをいいことに、学校にあまり来ていないようだけど、勉強のほうは大丈夫なのだろうか?

「沢渡くん、一緒に写真を撮ってくれない?」

・・・あ、はい。今日は3年の先輩だ。廊下を歩いているだけで呼び止められること多数。でも、できるだけ要望には応えるようにした。今更、写真は嫌いなので・・・は通用しなくなっているし。

「沢渡、行くぞ」

はい。丁度いいところに兼古先輩が通りかかった。相変わらずこの人は、僕のことをさりげなくフォローしてくれるので助かる。

「お前、生徒会長をやる気はないか?」

はいっ?・・・あ、そうか、来月の初めには生徒会長選挙がある。先輩としては、後継者を擁立したいというわけですか。

「でも、どれくらい学校に来られるか分かりませんし、何とも言えませんね」

「いや、単純な話、俺はお前が継いでくれるんだったら安心して引退できる。それに学校側としても、お前が学校の顔になってくれると、いろいろと助かる部分があると言ってる。殿下も生徒会長を務めていらしたんだろ?お前もやらないか?」

・・・そこで殿下の名前を出すのは、卑怯じゃないですか?それに、クリウスはもう有名になってるじゃないですか。十分でしょ。

「少し考えさせてください。多分一番のネックは物理的に時間があるかどうかということなんですよ。それは王宮のほうに聞いてみないと分かりません」

そうか・・・、と先輩はやや残念そうな顔になって、・・・でも気を取り直し、

「もし時間があったら、引き受けてくれるか?」

と聞いた。今の2年で生徒会長を務められそうな人間は・・・、いないこともないが、僕がクラス委員を務めているのも、他人に任せるより僕がやったほうが楽だと思ったからというのもあって・・・。

「先輩がどうしても、と言うのであれば、前向きに考えてもいいですけどね」

「よかった。・・・じゃあ、後は結城さんだな。加藤さん経由でお願いしてもらうよ」

ちょっと待ってください。王宮事情に詳しすぎでしょ。・・・僕を説得するには結城から。これほど効果的な方法はない。さすが先輩、心得てますね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です