クリウスの構内には、見たこともないくらい多くの人が詰めかけていて、廊下を移動するのも大変だ。でも、
「舞台、凄くよかったですよ」
「とても感動しました」
なんて声をいただけると、嬉しくなって大変さを忘れてしまう。・・・何気に、クリウスの先生たちまでもが僕を捕まえては舞台のことを褒めてくださるから、それはとてもありがたいことなのだけど、僕にもスケジュールの都合があるので失礼させていただくとして。
「ちょっと沢渡、人を連れて来過ぎ!こんなにたくさんどうするんだよ?」
やっと教室に着いて振り返ると、物凄い数の人がついてきていて、教室の内外から歓声が上がっている。これは予想以上の人出だ。どうにかして捌かないと。
「三木くんと玉井くん、お客さんとじゃんけんしてきてよ。勝った人だけ教室に入れるようにしよう。僕はとりあえず、ブラックジャックの台に入る。樋口さん、岡野さん、斉藤さん、ルール説明のポスターを書いて。朝霧は好きな台に入って。でもその前に悪いけど一曲だけ弾いてくれないかな?辺りを静かにさせてルール説明をしたいから」
みんなが散らばり、朝霧が午後のひとときにふさわしい曲を奏でると、辺りが一変、水を打ったように静まりかえり、僕自身も一息つくことができた。そしてしばらくして起きた拍手が収まった頃を見計らって、ルール説明をする。お客さんは入場料を払い、入り口のところでじゃんけんをする。・・・ただし、この二人はとても強く、早くも多くの人を撃退している。そして勝った人はチップを受け取り、教室の中の好きな台に進むことができる。そして貯まったチップは景品交換所で、お菓子や飲み物、僕との握手などと交換できる。
「今日は沢渡長官。いつもテレビで拝見しています」
「ありがとうございます。ですがここは学校ですので、くん付けで結構です」
でもやるからには店側に利益をもたらさなければならないので、表面的にはにこやかにしながらも根は真剣だ。
「うわ~、沢渡くん強すぎ」
「容赦ないな~」
いつの間にかクラスメートまでも寄ってきて、僕たちのゲームの成り行きを見守り始めた。
「僕のところはいいから、散って、散って」
「え~、でも面白いもん。はい、一息入れて次も頑張って」
村野さんまで、僕に飲み物を手渡して楽しんでいる。