「貴くん、よそ見しすぎ」
・・・あ、ゴメン。知り合いに似ていたから、確かめようとしていたんだ。そして舞のほうに向き直ると、むっつりした顔で、フォークを口に運んでいた。ほぼ1週間ぶりのデートで・・・でも、食事をとるだけの時間がなくてデザートだけになってしまったのに、怒らせている場合ではない。
「ゴメンって。言い訳はしない。・・・他の人よりもまず、舞に失礼があってはいけないよね」
「あのね、いつも気になるんだけど、義務感でそうしようと思うのならしないほうがましよ。私は別に貴くんを何かでつなぎ止めておこうとか、そういう風には考えてないから」
「じゃあ、どうして一緒にいてくれるの?」
「・・・また、今更そんなことを聞いて」
「だって舞の口から聞きたいんだもん」
「・・・貴くんは放っておくと暴走するから」
!?・・・もう、素直じゃないな。
「舞のほうこそ、その暴走を止めなきゃいけない!なんて変な責任感を持って僕と向き合っているのなら、やめてよ。止めてくれる人なら、周りにいくらでもいるから」
もう、ああ言えばこう言う、ホントにかわいくない、と舞は更にむくれたので、
「僕としては逆に、たがを外してくれる人がいると嬉しいな。だって普段はきっちり組まれたスケジュールをこなして、皇太子としてのイメージを崩さないように生活しているんだよ。だからたまにはそういうのを忘れさせてよ。・・・ま、僕に不機嫌な顔を見せる女の子なんて他にいないから、別にこのままでもいいけど」
睨み合うことしばし・・・もう、バカ!と額を小突く拳が飛んできた。・・・振り返る周りのお客さんたち。・・・気にせず、かわいいな~と舞のことを見つめている僕。
「分かったわよ。もう降参。人前だと絶対分が悪いもん」
「・・・別に関係ないんじゃない?」
「関係あるわ。周りの人たちはみ~んな貴くんの応援をしてる。・・・こんなところで手を振ったりしないでよ」
・・・うっ、今そうしようかと思っていた。
「ねえ、そろそろ時間でしょ?行きましょう」
あ、ちょっと待って。え?何?結局やきもきさせられているのは僕のほうなの?・・・凄くキスしたい気分だったのに。