昨夜遠足のことについて聞いてみたら、兼古先輩からも連絡があったとかで、みんなで遊園地に行こう、ということになった。ただ彼自身は行けるかどうか分からないとのこと。
「そうなんだ~、来てほしいよね~。・・・来てほしいと言えば、次はいつ学校に来るって?」
「まだ分からない。今部活のほうは先輩がいなくても回ってるから、あんまり積極的には来ないかもしれない。先月は財務長官に就任したところで、ホントはいろいろ仕事があったみたいなんだけど、部活のためにそれらを後回しにしてたみたいなのよね。それにもうすぐ殿下の結婚の儀もあるし、王宮はバタバタしてるみたい」
・・・この間まで雲の上の世界だと思っていた王宮の話を私がしてるなんて、ヘン。でも昨夜の電話では言ってみた、「会いたい」って。言ってどうにかなるものでもないと思ったけど、言わずにはいられなかった。
ホントに最近、気づくと彼のことを考えている。・・・少しタメ口にも慣れて、そしたら余計に親しみを感じられるようになった。ああ、こうして体育を受けるために体育館に行く途中で、先輩方の刺すような視線じゃなくて、優しい彼の視線に会えたらいいのに・・・。
!
あまりにも彼のことを考えすぎて、目がおかしくなったのかと思った。・・・けど、本物だ。廊下の先で彼が私のことを見ていた。
「昨夜、会いたいって言ってくれたから、会いに来た」
ホントに~!思わず固まってしまった私に彼のほうが近づいてきて、そっとハグしてくれた。・・・ここは学校の廊下なのに。
「折角だから、体育館まで送るよ」
うわ~、学校に来るときは大体朝言ってくれるのに、今朝は何も言ってなかった。
「たまにはビックリさせようと思って。ただ、部活には行けないんだよね」
「え?いつ来たの?」
「昼休み。ちょっと生徒会の打ち合わせがあって来たんだけど、次の授業を受けたらもう帰らなきゃいけないから・・・」
それで、廊下で待ち伏せしててくれたの?・・・嬉しすぎる。
「また会える時間を作ってくるよ。・・・でも次は、テスト勉強になりそうだな」
「意地悪。どうしてテストのことを思い出させるのよ」
・・・でも、会う口実になるかもしれない。
「コラコラ、学生の本分はきちんと全うしろって。分からなかったら教えてあげるけど、できるだけ自分で解決しとけよ。じゃないと、話もできなくなるだろ」
あ・・・そうだね。彼のためにも頑張らないと、と思ったところで、体育館の前まで来ていた。
「じゃあまたな。・・・若菜ちゃん、深雪のことよろしくね」
はいっ!と隣で若菜が、敬礼しながら元気に答えていた。