新婚初夜は・・・、二人とも疲れていてすぐに寝てしまった。それでも目覚めると新しい部屋で、隣には彼女がいて、たくさんのお花に囲まれていたので、ほのかな幸せを噛み締めずにはいられなかった。
夜はお互いの家族や親戚たちを呼んだ披露宴が行われるのだけど、昼間はのんびりできる。だから二人きりで・・・と思っていたら、モーリスが一緒に食事をしたいと言ってきた。
“改めておめでとう、両殿下”
仕方なく僕たちの自室に招くと、早速舞に部屋の案内を頼んで・・・本当に困ったヤツだ。
“嬉しいのだけど、あまり邪魔をしないでくれるかな?”
“そんなこと言わないで。だったらSawaも呼ぶ?”
“ダメだよ。彼は、僕の分の仕事まで引き受けてくれていて忙しいから”
“モーリス殿下の恋愛は順調なんですか?平和活動に貢献されていると伺いましたが”
それだ!絵本の一件以降は経過を聞いていない。
“Mai・・・そんなによそよそしく話さないでくれるかな?僕はあなたのご主人の親友なのに”
親友じゃない、悪友でしょ。
“でも現実はなかなか厳しいかな?本当は式にも一緒に出席するつもりだったんだけど、断られたんだ。僕と付き合うのは楽しいけれど、改まった場に、畏まって出なきゃいけないのは面倒だって。・・・Maiはそういうことに抵抗がなかった?”
そうだ、先日の深雪ちゃんの件もそうだけど、僕たちと付き合うことは楽しいことばかりではないに違いない。舞からはそういう相談をほとんど受けなかったから、僕自身もどう対処していたのかが気になる。
“不思議なことに、私にはあまり抵抗がなかったのよね。貴くんのことに関しては何でもそう。付き合い始めたのも何となくで、それが結婚に発展したのも何となく。なるべくしてなったとしか言いようがないから、私はいいアドバイスがしてあげられないの、ごめんなさい”
確かに、僕たちは些細なことでは喧嘩をしても、別れる別れないだの、そういう大きな喧嘩はしたことがない。・・・例のマリッジブルーのときには少々弱ったけれど。
「ねえ、僕も聞いていい?どうしてあのとき、あんなに不安になったの?僕が何かした?」
今なら聞いてもいいかと思った。
「別に不安になったとかそういうことはなかったんだけど、・・・今思うと春からずっと一緒に生活していたから、離れるってことが逆に普通じゃない状況に思えたのよね。一緒にいたときは全然気づかなかったんだけど」
やっぱり僕が推測した通りだったか。僕たちの関係は不思議なものだ、目に見えない何かによって結ばれているんだ。
“ねえ、勝手に母国語に変えないでくれる?僕も仲間に入れてよ”
・・・どうせ、分かっているんだろうが。