10/31 (月) 21:30 仕事風景

明日は加藤の誕生日なのだけど、何せ加藤とは一日の大半を一緒に過ごしているから、プレゼントを用意するのは一苦労だ。・・・ネットで注文するのが一番無難だな。

僕が財務長官に就任してから、周りにいる人間が一気に増えた。側近としての加藤、ヘアメイクを担当してくれている仲野さんは僕の中では本当に家族みたいな感覚になっているけど、その他、仕事面での秘書としては松本さんを筆頭に数名、運転手やスタイリスト、加藤の補佐役、などが新たに増え、僕はひっくるめて沢渡班と呼んでいる。今までは何においても指導を仰ぐ立場だったのに、沢渡班においてはその名前通り僕が責任者として部下たちを統括しなければならないので、当初は気負うことも多かった。しかし今は、大分落ち着いて辺りを見渡せるようになってきた。

宮殿に戻ってきて執務室に入ると、机には書類の山が築かれていた。

「今日はたくさんコーヒーを召し上がっていらっしゃいますので、ココアはいかがでしょうか?」

何においても気が利くのが加藤のいいところ。少し疲れてもいるので、甘いものが欲しい気分だった。

「うん、お願い」

「失礼いたします。書類についての説明をさせていただきます」

入れ替わるように松本さんが入ってきた。基本的に、加藤はスケジュール管理はするものの仕事内容については関与していない。よって仕事内容に関しては全て第一秘書の松本さんと話をする。そして彼はまた、秘書部門を取り仕切る責任者でもある。

いずれにせよ、部下とは言え、全員が僕よりは年上だ。彼らへの接し方は、殿下のやり方を参考にさせていただいている。殿下は年齢や立場に関係なくすべての人に敬意を持って接していらして、仕官や部下に対しても竹内さん以外には丁寧語を使われる。その様子がとてもスマートでカッコイイので、僕も真似させていただいている。・・・ちなみに結城は陛下以外には食ってかかるような口調で話し、それはそれで結城のキャラに合っている気がするけど、僕には合わない。

「分かりました、残りは後で読んでおきます。ご苦労様でした」

「はい。失礼いたします」

松本さんとは仕事以外の話はほとんどしたことがない。彼は仕事はできるけど堅物タイプだ。でも仕事ができればそれでいいと思っている。いつも徹底的に調べた上で分析をし、それらをうまくまとめて話してくれる。質問にも的確に答えてくれる、頼りがいのある人だ・・・。

「失礼いたします。郵便物がいろいろと届いているのですが、チケットやCDがだんだん増えてきたのは、どういうわけでしょうか?」

加藤~、いいじゃないか、僕の人脈が広がりつつあるということで。でも全部は観に行けないし、もったいないな。

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