11/16 (水) 21:30 イストvsクリウス

イストを訪問するのが明日に決まったところで思い出した。先日、高校生論文コンテストの審査員を頼まれて最終候補作品を読んだときに、確かその名前があった、早川一真。

彼は入宮を希望していて、この国を変えたいという野望を抱いていた。しかし、締め切り後、僕が財務長官に就任した。自分と同い年なのにすでに国政に携わっている人間がいると知ったときには、面白くないと思ったに違いない。それが遠足のときの態度に繋がったのではないだろうか。

それと合わせて、イストとクリウスのバトルの歴史についても調べてみた。両校はほぼ同じ歴史を持っているが、設立当初からイストはクリウスのことを見下していたらしい。そう、そこで分かったことは、イストが勝手にクリウスのことをライバル視しているだけだということ。

「そうですね、何かにつけてクリウスのことを引き合いに出すのは確かです。模試の結果や入宮者数、部活の大会でクリウスに勝つと大騒ぎになりますし、逆に負けると周りから白い目で見られます。ただ、格闘技部はクリウスにはありませんので、プレッシャーを受けずに済みました」

と言うのは加藤。加藤は僕の側近になって初めてクリウスに出入りするようになったわけだが、おおらかな雰囲気にはかなり戸惑ったようだ。

「あれだけ私たちがクリウスのことを意識してきたのに、クリウス側では全く意識していないだなんて、ただただ虚しいとしか言いようがありませんね」

毎年の入宮者数に関しては以前までは圧倒的にイスト出身者のほうが多かったのだが、クリウス出身者の響殿下が皇太子になったことで、ここ数年はクリウス出身者も増えてきている。そして、見えないバトルは王宮内でも見られるわけで・・・イスト出身者は、例のごとくクリウス出身者より早く出世をしたいと思っているらしく、仕事には熱心だ。でも仕事というのは協力してやるべきことなのに、つまらないプライドのためにチームがギクシャクしてしまうのは困る。その根源を断ち切りたいという思いもあって、イストを訪れてみようと思ったわけだ。

「その気持ちは分かるよ、勝手に目の敵にされても困るよね。僕たちの考えは知っておいてもらいたい」

「何かその余裕をかましている感じが許せないんだよな。親が稼いだ金で生活しているくせに、どうしてそんなに偉そうなんだよ」

「別に偉そうにしていないよ。小さなことにイチイチ気をとられていては、本当に大切なことを見過ごしてしまうかもしれないよ」

「俺は別にちまちまなんかしてないぞ。お前のそのひねくれた態度のほうがよっぽど問題だ!」

・・・分かりましたよ、もう。殿下が結婚されたら収まるかと思いきや、この光景には変わりがないわけで・・・。

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