11/25 (金) 16:00 個人、公人

自分の将来をとるか、現在をとるか。・・・もちろん、将来のことを考えるほうが大事だ。そこに思い至ったら、とるべき行動は一つ。沢渡に直接メールを書くことのみ。

“沢渡くんがそこまで言うのなら、クリウスに行ってみてもいいかと思いました。案内してくれますか?”

あくまでも、下手には出ない。僕だって彼と同じ生徒会長なのだ。対等な扱いを望む。

“僕のほうからお誘いしたのですから、喜んで案内させていただきます。つきましては、急な話ですが、明日などはいかがでしょうか。部活の様子なども見ていただこうと思います。”

・・・何やってんだ、アイツ。昼休みにメールを送信したら、一時間としないうちに返事が届いた。学校か?それとも仕事か?は知らないけれど、忙しいわけじゃないのか?まあ、彼の事情は知ったことではないが、とりあえず明日は空いているので、返事をしておいた。

放課後の生徒会室で。

僕は特に用事がなくても、大体ここに来て夕方の時間を過ごすのが習慣になっている。塾や予備校は長期休暇のときでないと行かない。ちなみに、ここにはいつ誰が入ってくるか分からないので、勉強だけはしないようにしている。まあ純粋に生徒会の雑務が次から次へと押し寄せてくるので、それをこなしたり、あとはPCをいじったりかのどちらかだ。

「はい」

返事をすると、入ってきたのは生徒会を担当している先生だった。

「早川、あまり個人プレイに走るんじゃないぞ」

え?・・・個人プレイが得意なのがイストの学生の特徴じゃありませんか?何がいけないんですか。

「確かに、ここの生徒は他人に対して我関せずの態度をとる者が多いが、入宮を希望している者も多い。だから、抜け駆けして周りからの反感を買うようなことはあまり薦めない」

・・・沢渡には近づくなということですか?

「もっとも、早川が入宮するのはほぼ確実だろうから、今更警戒してもしょうがないとは思うが、生徒会長の地位はあまり利用するな。このまとまりのない生徒たちをきちんと導くことも、生徒会長の務めだぞ」

公私を区別しろと・・・。でもその前に、

「なぜ僕の入宮は確実だと言えるんですか?」

「・・・それは、結城がお前のことを気にしていたからだ」

結城さんが僕のことを知っているんですか!

「それで、何か仰っていましたか?」

胸が激しく打ち付ける。

「論文を褒めていたよ。でも協調性はどうか、と心配してもいた」

・・・それは王宮で働くことを前提として、ということですよね。

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