率直に言って、イストには変わり者が多い。もともと個性を重んじる校風だったのに加えて、頭がいいヤツが揃ったおかげで、ライバル意識が強いあまりに他人とあまり関わらないタイプと、逆に同じ分野で競うことは放棄してまったく別の分野で認められようとするタイプの二つに分かれている。僕は生徒会長という立場ゆえ、他の生徒の行動を把握しておかなければならないので、一応誰とでも気さくに話すようにはしているけれど、内心はできるだけ一人でいたい気持ちでいっぱいである。・・・でもここは、情報収集に努めねば。
放課後、生徒会室に来ていただいたのは、前生徒会長の中瀬さん。思い切って沢渡からの依頼について相談してみた。
「それは難しい問題だな。沢渡長官とのやりとりは、早川が個人的にしたほうがいいんじゃないか?」
「でも彼は、あくまでもイストとクリウスとの関係について考えているわけで、僕個人のことなんて見てませんよ」
「でも、一人でいらしたわけだろ?だったら、お前個人に興味がないわけないだろう。・・・そしてこの機会を無下にするようなことだけはやめておいたほうがいいと思うぞ。何だかんだ言って、どの世界もコネが大事じゃないか。お前も入宮試験を受けるつもりなら、分かるよな」
・・・先輩もそう考えますか。結局、イストvsクリウスのバトルはバトルとして成立していないというわけだ。そうそう、肝心の結城さんは?
「入宮希望者のセミナーで最初に会ったときは強烈だったな。浅はかな質問をしようものなら、『そのくらい自分で調べるように』と言っておしまいだ。でも、この国の進むべき方向へのヴィジョンが明確にあって、なおかつそれが俺の目指すところと同じ方向を向いていたから、入宮したいという思いは強くなった。・・・どうして表舞台に立たないのか不思議でしょうがない」
「となると、沢渡長官は単なるペットだったりするわけですか?」
「何てことを言うんだ!身の程を知れ!」
え?・・・先輩もこの間までは一緒になってクリウスに敵対心を持っていたじゃないですか。
「彼は凄いよ」
先輩は神妙な面持ちで静かに話し出した。
「結城さんの思考力だけでなく、殿下の行動力をも受け継いでいらっしゃるのが、沢渡長官だ。生徒会長としてはどうだか分からないが、仕事に関してはプロだぞ。早川も同い年だからと見くびっていたら、痛い目に遭うぞ」
先輩も痛い目に遭われたんですか?
「・・・詳細は言いたくない。でも見事に玉砕したことだけは確かだ」
・・・一体何があったのだろう?