希ってば…。思い出すだけで、恥ずかしくなってしまう。まさか学校であんなことを…。
“大部分は、しばらく会いに行けていなかった俺のせいだけど、お前のせいでもあるぞ。最近やたら不安定で、会っても何も言ってくれないし、とりあえず落ち着かせることが先決だと思ったんだ」
…そんなセリフ。ますます恥ずかしくて何も言えなくなっちゃうよ。
“でも、基本的に俺は、言ってもらわないと分からないタイプだから、できれば言葉にしてくれるほうが嬉しいよ。そうでないと、こっちが不安になる。前にも言ったけど、深雪は俺に何でも言っていい権利を持っているんだから、有効活用してほしい”
あ…。そうだよね。希は、表に出ているときは、凄く饒舌で雄弁に語る。議会での討論を見ていても、言葉の使い方が巧みで、思考回路が発達しているんだな、といつも感心する。そうか、希を不安にさせたらダメだよね。煩わせたりしたら、飽きられてしまうかもしれない。
「恥ずかしかったけど、嬉しかった。…でもまた会いたくなって困る」
“来週は試験だよ。勉強のほうは大丈夫?”
あー!希が皇太子に即位したとき、私も自分磨きを頑張らなきゃと思ったのに、ここ数日希のことで頭がいっぱいになっていて、おろそかになってる。このままじゃダメだ。
「私、少しでも希に近づけるように頑張るから。みんなに認めてもらいたいなんて思ってないけど、せめて、頑張っているところは分かってもらいたい」
“何?また何か嫌がらせとかされているのか?”
…余計なことを言っちゃったかな?
「むしろその逆。みんな私のことを相手にしてくれないっていうか、無視する作戦に出ているみたいで、あまり居心地はよくないかな。でもいいの。危害を加えられたりとか、そういうのはないし、むしろ安全かも」
“深雪…。ゴメンな、いろいろと辛い思いをさせて”
「でも、いい思いもたくさんしているから大丈夫。多少のことは我慢する」
今をときめく希が私のことを愛してくれているだけで、満足の度合いを遥かに超えている。
“それでなんだけど、お互いのことを考えて、定期的に会う約束をするのはどうかと思って。そうすれば、不安も少しは減るだろうし、お互いに頑張れるんじゃないかな”
え~!!!素敵な提案。
”とりあえず、毎週土曜日の夜は一緒に過ごしたい。ご両親の許可はいただけそうかな?挨拶に伺いたいと思うんだけど、いつがいいかな?”
「いや、そこまでしてくれなくても、特に問題はないと思うよ。希の元にだったら、安心して行かせてくれると思う」
“そう?でも、けじめとして、手紙は書いておこうと思う。それじゃ、早速、今週の土曜日に迎えをよこすから、楽しみにしているよ”
うわ~、嬉しいな。それまでに、できるだけテスト勉強を頑張らないと。