2/11 (土) 19:30 定期の来客

昨日の晩餐会の後は特に何もなかったそうで、今日は部活の後、一旦宮殿内で、秘書たちとの打ち合わせが行われている。その一方で、私は深雪さんを迎えに上がり、殿下のお部屋までお連れする間、いろいろとお話を伺うことにした。

「最近、学校でお変わりはありませんか?お過ごしにくいことなど、ありませんか?」

そうお尋ねすると、深雪さんはいつも、うつむいて首を横に振られる。

「私は別に平気です。私だけが幸せになるわけにはいきませんから」

深雪さんとしては、他の女の子たちが殿下のことを好きになる気持ちは分かるから、自分だけがいい思いをしては申し訳ない、と思っていらっしゃるようだ。しかしその深雪さんが辛そうな顔をなさると、殿下にも伝染する。そして、殿下はご自分をお責めになる。

「いいんです、私のことは。それよりも、最近希が心を開いてくれることのほうが嬉しくて…」

そうなんですか?と話を伺うと、殿下は深雪さんの前で強がるのはおやめになったのだと。その結果、前よりうまく行くようになったのだと…なるほど、深雪さんと付き合われてから、殿下は随分とお変わりになりましたよね。

「私も、希のために出来ることがあるのなら、付き合っていてもいいのかな?って」

いえいえ、今や深雪さんは、殿下にとってだけでなく、王宮にとってなくてはならない人ですよ。

「私からも、深雪さんにお礼を申し上げます。殿下が激務に耐えていらっしゃるのは、深雪さんのおかげです。ありがとうございます」

「…やっぱり、疲れてますよね。ちょっと痩せたんじゃないですか?」

え?…そこまでは気づいていませんでした。四六時中一緒にいると、逆に気づきにくいのかもしれませんが、今のところスタイリストからの指摘はないようで…。

「栄養価の高いものを召し上がっていただくよう、栄養士とも相談して、気をつけているつもりでしたが、また改めて打ち合わせをさせていただきます。ですが、今のところ、ドクターからは、辛うじて健康とのお言葉をいただいております。…ご心配をおかけして申し訳ありません」

「でも、今が大事なときですよね。…少しでも喜んでもらおうと思って、今日はお菓子を作ってきたんです。あ、結構多めに用意してきたので、よかったら召し上がってください」

よろしいのですか?…でも、殿下に止められそうな気が。一応伺ってからにしておこう。

「それでは、また何かお気づきの点や、不都合な点がございましたら、お気軽におっしゃってください。予定では、もう少しで打ち合わせは終わることになっておりますので、それまではどうぞご自由になさってください」

「分かりました。ありがとうございます。加藤さんも、お身体にはお気をつけください」

私の心配までしてくださるなんて、ありがとうございます。できるだけ早く、殿下にお越しいただけるよう、様子を見て参りましょう。

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