土曜日は深雪ちゃんへと譲ったので、最近は毎週日曜日に、沢渡と夕食をとっている。仕事で顔を合わせることは少し前よりは増えたが、それでもやはり二人きりでないと話せないことも多い。沢渡のコンディションを知るためにも、この時間は欠かすことができない。
「結城って、料理はできる?」
何だよ。
「これでも、大学のときは一人暮らしをしていたし、部活で合宿もあったりしたから、それなりにできるよ」
「え~!そうなの!」
「ただ、入宮してからは時間がなくて、全然しなくなったけどな」
「…なるほど。それで僕は料理については全く学ばなかったわけだ。料理は専門家に任せるものだと思ってたから、料理を作るという発想自体、僕の辞書にはないんだよね」
おい、俺のせいにするなよ。子育てに苦戦しなければ、教える機会もあっただろうけどな…。
「まあ、まあ、料理も結構だが、それよりもお前の仕事をきちんとしろよ。高校生討論会の準備は大丈夫なんだろうな?」
「うん。出席者の小論文をもう一度読み直して、作戦を立てているところだよ。…早川について、何か聞いてる?」
「聞いてるというか、楽屋では少し話をしたいと思っているけど」
「それって、スカウト?」
「王宮にとっては、貴重な戦力になると思うから、俺は期待している」
「そうなんだ…。僕のことは二の次なんだ…」
は?何を言ってるんだ?…焼きもちを焼いている場合か?
「別に誰であろうと、使える人間は登用する、っていうただそれだけだ。お前もせいぜい、俺に飽きられないように、研鑽を積むことだな」
「ひどーい。僕は頑張ってるよ。睡眠時間もできるだけ削って、勉強するようにしているよ」
「それは知っているが、大事なのはあくまでも結果だぞ。世間の人はそこしか見ないからな。…お前、最近あまり顔色がよくないぞ。無理しすぎて体調を崩したら、元も子もないから、気をつけろよ」
「それは大丈夫だよ。慣れてるし」
…と言ったそばから、沢渡がくしゃみをした。
「ホントに、大丈夫か?」
「僕だって、くしゃみくらいすることあるよ。心配ないって」
そうか?…何だか、目がうつろな気がするが、気のせいか?
「熱は?」
沢渡の手を取り、そして額に手を当てる。うーん、今のところは大丈夫そうだけど。
「ちょっと鼻がムズムズするけど、別に大丈夫だから」
「なら、いいんだけど。何かあったらすぐ言えよ」
…とは言ってみたが、沢渡のことだから、具合が悪かったとしても、自分からは言うはずがない。加藤に、よく気をつけるようにと言っておこう。