2/18 (土) 23:00 翻弄

深雪は、更にクッキーを焼いて持って来てくれた。

「このキッチンのオーブンレンジ、凄くいいものだから、今度はここで焼いてもいい?」

そうなのか?

「確かに、オーブンってボタンがあることは知っていたけど、使ったことないね」

「やっぱり。でも、作業をするにはちょっと狭いのよね、ここ。だから、下準備をして持って来て、ここで仕上げるって感じにしようかな?」

あー。料理をするということは全く学ばなかったので、キッチンも簡単なものしかないんだよね、僕の部屋は。

「僕の部屋のものは、好きに使ってくれていいよ。…こうして毎週来てくれると分かっていると、平日も頑張れる」

そして、ぎゅっと抱きしめると、そのまま離したくなくなってしまう。

「一緒にお風呂に入ろう。片時も離れたくないんだ」

「希…」

恥ずかしそうにうつむく深雪を連れて、一緒にお風呂に入る。…このお風呂も、もう少し広いといいのにな。いや、狭い分、密着できていいか。

「そうやって恥ずかしがると、こっちも意識してしまうものなんだよ。男心が分かってないな」

「そういうものなの?」

「そうだよ。今は単に、深雪と話をしたいだけだから。今週何があったか、話して」

と言いながらも、彼女を抱きしめる腕に力を込めるのだけど。

「あ、そうそう、高校生討論会なんだけど、会場に見に行けることになったよ。若菜の分も私が引き当てたの」

あ~!来週の火曜日、高校生討論会が行われる。その会場には、抽選で選ばれた人だけが入れることになっていたのだが、さすがにホストを務める僕の権限もあって、特別にクリウス枠を設けさせたのだった。それにしても、数的にはそれほど多くなかったはず。

「そうか。愛がなせる技だな」

「ね。ホントに、ズルとかしてないから」

ま、もし外れたと言われたら、特別に席を設けさせる予定だったけど、正々堂々と入ってきてくれるのは嬉しいことだ。

「じゃあ、俺も頑張らないとな~。イストの早川が、噛みついてきそうだし」

「見た目からして頭がよさそうで、近寄りがたい人だよね。…あ、ゴメン。希はスーパー頭がいい人だった」

「…そっか、それで今もなかなか近寄ってきてくれないんだ」

「違うよ。希の場合は、それだけじゃなくて…、凄くカッコイイから。…でも最近、希に抱きしめてもらうと、凄く落ち着くようになってきた。…見てるだけじゃ、嫌だなって思う」

深雪…。

「でも今は、お話をする時間なんだよね」

うっ…。思わずキスをしようかと思ったところ、深雪に先を越されてしまった。

「ヤバイ。俺、深雪に翻弄されてる…」

「え?まさか」

いやいや、無意識だったら余計に問題だろ!…ホントに、彼女といると、いろんな感情を味わわされて、飽きないな。

このままでは終わらせないから、覚悟していなさい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です