2/20 (月) 22:00 前夜

「どうだ具合は?」

「眩暈がひどいようです。今薬を投与して眠っていただいていますが、…いつ倒れてもおかしくないと前から申し上げていたではありませんか、今度こそはしばらく安静にしていただきます」

結城とドクターの声が遠くのほうで聞こえるような…とはいえ身体が凄く重くてまぶたも持ち上げられない。

「参ったな。…明日の討論会、テレビの収録に加え全国から高校生が集まるんだよな」

「申し訳ありません、私が至らぬばかりに…」

「いい、いい。お前のせいじゃない。…討論会だけでも何とかならないかな?その数時間ほどでいい」

「無茶ですよ、取り返しのつかないことになったらどうなさるんですか!…まあ殿下も精神力の強いお方ですし、『這ってでも行く』とおっしゃるでしょうが、最低でも三日の安静、これだけは譲りませんよ」

嫌だ、何としてでも行くよ。

「絶体絶命だな、…だが少し考えさせてくれ」

「結城さん!」

「ほら加藤も今日は休め、疲れているだろう?」

「ですが…、分かりました。失礼します」

…足音が近づいてきて、太い指先が僕の前髪に触れる。

「本気で倒れるなよ、バカ。今夜は俺がついてるから、ゆっくり寝ろ」

いいって、結城も疲れているんだから…って言いたいけど言葉が出ない。…でも凄く落ち着く、いい気持ち。だんだん意識が奥底へ引きずり込まれていく…。

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どうしようか。一刻も早く決断を下さなければならないのに、朝になったら何事もなかったかのように目を覚ましてくれるのを期待している。延期か中止か…それとも沢渡抜きでやってみるか。

あの早川という男なかなかやってくれそうなんだな。沢渡がイストに乗り込んだ後、例のサイトは閉鎖してくれたためお礼のメールを出した、すると返事が帰ってきてもう一度会って話そうということになり、それ以来時々連絡を取っているらしい。俺も一度電話で話しているところを聞いたことがあったのだが、なかなかどうして、いい友人同士みたいな感じだった。…初対面の印象は最悪だったらしいのに、分からないものだな。

でもやっぱり沢渡がいないと意味がない、朝になるまで待ってみてダメなら延期、と。働かせすぎたな、やっぱり。学校は無理かな、あと一年…仕事は待ってくれない、何とか出来ないかな。

透けるような白い肌、また少し痩せたみたいだ。俺が守るって響にも誓ったのに、こんなに辛そうな顔をさせてしまって…、悪かった、ごめん。でも明日だけ頑張ってくれ、そのあとは一週間オフにするから…俺の力を分けてあげたい。

手を握ることしか出来ないもどかしさを感じながら、その指先にキスをする。早く良くなって抱きしめさせてくれ。お前が俺の腕の中で、『苦しいよ~』と途切れ途切れの声を出して縋るように見上げるその瞳が好きだ。お願いだから良くなってくれ、お願いだから…、両手で包み込んだ左手を額に引き寄せる。

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