う~ん、と、久々によく寝たような充実感、…とは別に身体は相変わらずずっしり重くて言うことを聞いてくれない。どこだ、ここは?
「お目覚めか?おはよう」
「お…は…よ…う。え~っと、どうなってるの?」
「どこまで覚えてる?」
結城がベッドサイドに来て、椅子に腰掛ける。
「倒れたことは何となく…で、討論会はどうなった?」
「覚えてないのか?早川とのバトル面白かったぞ、…今度ビデオで見せてやる」
「変なこと言わなかった?ほとんど覚えてないんだ」
「本気かよ、たいしたヤツだな、完璧だったよ。…今日明日は絶対安静だからな、じっとしてろよ」
「言われなくても動けない…」
じゃあ遠慮なくいただき…と意味深な言葉を発して僕の唇を求める。卑怯だよ、分かっててこんなことするなんて…。
「そんな目で見るなよ、俺はこれから仕事に行くんだから。…話し相手の立候補者はたくさんいるし、楽しみにしてろよな」
「あ…うん。でも仕事は…」
「仕事禁止。早く治すことが先決だ」
テーブルに広げてあったパソコンや書類を片付けて、じゃあなと部屋をあとにする。…目覚めるまで側にいてくれた、そして僕の仕事を代わりに引き受けてくれる…、情けない。
入れ替わりでやって来た加藤とドクターに今までのことを聞くと、討論会のあと倒れてから丸一日眠っていたそうだ。そしてこれから一週間のオフ。幸いなことに討論会はとても評判が良かったそうで、マスコミには軽い風邪ということで通すらしいが、それを踏まえて今後の僕の仕事の方針について話し合われているそうだ。
「殿下は立派に仕事を務め上げられました。そんなにご自分を卑下なさらないでください」
「そうです、普通の人間なら起き上がることもままならなかったはずです。やむを得ず強い薬を使いましたので今はこのような状態ですが、一週間もあれば完全復帰できるでしょう。本当に殿下の精神力は医学の常識を覆すものですね、おみそれいたしました」
全然嬉しくない…、倒れるなんて最低だよ、迷惑ばかりかけて…、このまま消えてしまいたい気分だ。悔しくて、でも泣いたらもっと惨めだ…顔を背けて壁を睨みつける。…まだ朦朧としているせいかと思ったけど違う、コンタクトを外されているせいで周囲がよく見えない。僕には何もさせてくれない…、こんな屈辱他にない…。
「殿下、お気持ちは分かりますが…」
「同情なんかされたくない!…一人にしてほしい」
分かりました、失礼いたします。…すごすごと下がっていく二人、…こらえていた涙が一気に溢れ出して視界が歪んでいく。僕は翼をもがれた鳥みたいだ、どうしたらいい?