そういうわけで、いつものように深雪が部屋に来ているが、何やら様子がおかしい。
「昨日の希、凄く綺麗だったなぁ。でもそれだけにちょっと複雑…」
昨日は、やはり、3年生をもてなすというのが会の趣旨だったので、兼古先輩始め、諸先輩方につかまってしまい、深雪と一緒にいられる時間が少なかった。それでも、一緒に写真に撮ったりしたじゃないか。
「どう複雑?」
「男性なのにあんなに美しいなんて、ずるい。女の子として、やりきれないわ…」
「そんなことないって。深雪は、あんな風にメイクしなくても、綺麗じゃないか」
「まあ、それもこれも、希が美形だからで。メイクをしていないときは、普通にカッコイイし、いいなぁ~って」
おいおい。
「言葉を返すようだけど、その俺が、深雪のことを一番綺麗だって言ってるんだよ?それに、俺には何をしてもいいって言ってるんだよ?何が不満なの?」
「別に、希に不満はないよ。自信がなくなるだけで…」
もう、深雪の悪い癖だな。
「深雪は凄く綺麗だし、俺には、深雪しかいないし。…むしろ、そうやって拗ねてるほうがかわいくないから、やめたほうがいいよ」
ふくれているほっぺを、プニプニとつまんでみる。
「やだ、もう!これ以上ブサイクになったらどうするのよ?」
「どうなっても、全部俺が面倒見るから、心配しなくていい。それどころか、俺は、深雪を綺麗にしてあげる魔法を知っている」
そして、深く深く口づける。…感じてるとき、どんなに綺麗な顔をしているか、深雪自身にも見せてあげられたらいいのに。
「それから!」
え?何?まだあるの?
「希が、本気で感じてたのが、ちょっと…」
ギクッ。…やっぱり、バレていたか。
「その点は、俺としても複雑だな。まさか、朝霧が俺の急所を知ってるなんて思わなかったから…」
「急所?どこ?それ?」
そうか、深雪は気づいていなかったんだ。
「教えなーい。自分から弱みを白状するバカなんて、この世にいないだろ?」
「えー、知りたい」
「急所を知らなくても、俺が感じてる様子はいつも見てるだろ?それで十分じゃないか」
「でも…。希のこと、全部知りたいし」
「もし知られたとしても、付け入る隙は与えないけどな」
「えー、ずるい。…そういうこと言われると、余計に気になる」
「じゃあ、試せばいいだろ?俺には何をしてもいい権利を持ってるんだから」
「でも…、感じてないフリしたりするんじゃない?」
あはは。苦笑するしかないな。
「俺、そこだけはホントに弱いから、演技とか出来ないし。絶対声が出る…」
「そうなんだ!じゃあ、早速…」
「そうはさせない」
俺は、深雪の身体をなぞり、急所を突く。深雪の弱いところは、全部知っている、つもりだ。
「ずるい…。はぁっ…」
「俺の急所を突いたら、何倍にも返してやるからな。覚えとけよ」
そして、あっという間に逝かせる…。