3/11 (土) 23:30 急所

そういうわけで、いつものように深雪が部屋に来ているが、何やら様子がおかしい。

「昨日の希、凄く綺麗だったなぁ。でもそれだけにちょっと複雑…」

昨日は、やはり、3年生をもてなすというのが会の趣旨だったので、兼古先輩始め、諸先輩方につかまってしまい、深雪と一緒にいられる時間が少なかった。それでも、一緒に写真に撮ったりしたじゃないか。

「どう複雑?」

「男性なのにあんなに美しいなんて、ずるい。女の子として、やりきれないわ…」

「そんなことないって。深雪は、あんな風にメイクしなくても、綺麗じゃないか」

「まあ、それもこれも、希が美形だからで。メイクをしていないときは、普通にカッコイイし、いいなぁ~って」

おいおい。

「言葉を返すようだけど、その俺が、深雪のことを一番綺麗だって言ってるんだよ?それに、俺には何をしてもいいって言ってるんだよ?何が不満なの?」

「別に、希に不満はないよ。自信がなくなるだけで…」

もう、深雪の悪い癖だな。

「深雪は凄く綺麗だし、俺には、深雪しかいないし。…むしろ、そうやって拗ねてるほうがかわいくないから、やめたほうがいいよ」

ふくれているほっぺを、プニプニとつまんでみる。

「やだ、もう!これ以上ブサイクになったらどうするのよ?」

「どうなっても、全部俺が面倒見るから、心配しなくていい。それどころか、俺は、深雪を綺麗にしてあげる魔法を知っている」

そして、深く深く口づける。…感じてるとき、どんなに綺麗な顔をしているか、深雪自身にも見せてあげられたらいいのに。

「それから!」

え?何?まだあるの?

「希が、本気で感じてたのが、ちょっと…」

ギクッ。…やっぱり、バレていたか。

「その点は、俺としても複雑だな。まさか、朝霧が俺の急所を知ってるなんて思わなかったから…」

「急所?どこ?それ?」

そうか、深雪は気づいていなかったんだ。

「教えなーい。自分から弱みを白状するバカなんて、この世にいないだろ?」

「えー、知りたい」

「急所を知らなくても、俺が感じてる様子はいつも見てるだろ?それで十分じゃないか」

「でも…。希のこと、全部知りたいし」

「もし知られたとしても、付け入る隙は与えないけどな」

「えー、ずるい。…そういうこと言われると、余計に気になる」

「じゃあ、試せばいいだろ?俺には何をしてもいい権利を持ってるんだから」

「でも…、感じてないフリしたりするんじゃない?」

あはは。苦笑するしかないな。

「俺、そこだけはホントに弱いから、演技とか出来ないし。絶対声が出る…」

「そうなんだ!じゃあ、早速…」

「そうはさせない」

俺は、深雪の身体をなぞり、急所を突く。深雪の弱いところは、全部知っている、つもりだ。

「ずるい…。はぁっ…」

「俺の急所を突いたら、何倍にも返してやるからな。覚えとけよ」

そして、あっという間に逝かせる…。

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