3/20 (月) 10:00 議会見学報告会

議会が終わったということで、珍しく今日は朝から登校している。春休み直前なので、まともな授業はないが、その代わり、先日の議会見学の報告会が、全校生徒の前でなされることになっている。

まずは見学者の代表が、当日の内容を説明する。あの日投げかけられた質問からヒントを得たことで、答弁が更に充実したものになった。それは、参加者もみな一様に感じたことだったようだ。

その上で、数名が感想を述べたり、更に僕に質問したりする時間となった。

「学生による議会見学は、若年層の政治への関心を高めるためのいい機会になると思います。沢渡くんが皇太子に就任することによって注目されている、今のこの機会を逃す訳にはいかないと思います」

「ちなみに、今週末の『H-K Time』では、今回の見学の模様を少し紹介できることになりましたので、お知らせしておきます」

すると、客席からも、おぉー!っと拍手が沸き起こる。

「見学の申し込みは結構来ているので、今回のノウハウを活用する予定になっています」

すると、客席から手が挙がった。

「率直に聞かせてほしいのですが、入宮する場合、大卒と高卒では、どちらが有利なのですか?」

なるほど。高校生にも、議会見学を勧めている以上、すぐさま入宮したいという希望者も増えることは見込んでいる。

「例えば、響殿下は高卒で、僕の教育担当の結城は大卒で入宮しています。必ずしも皇太子ひいては国王、もしくは国務大臣になるのが、政官としてのあり方ではなく、現在僕の秘書を務めてくれている方々も、立派に仕事を全うされています。正直なところ、高卒の場合は、個人が持っている知識や経験が乏しいため、入宮当初はかなり苦労していると聞きます。しかし王宮は実力至上主義で、学歴は関係ないため、早く実務に携わりたいという強い意志があるなら、とりあえず高卒程度試験を受けてみるのは、選択肢の1つだといえます。大学に進学する場合と違って学費は必要ありませんし、住居も提供します」

「どんな勉強をしておくといいのですか?」

「ちなみに王宮には、政官コースのほか、仕官コースもあります。政官コースなら、まずは語学が堪能な方が有利です。そしてもちろん、政治経済の知識、文筆力、コミュニケーション能力のうち、複数の分野に渡って長けているほうが評価を得られやすいです。その一方で、仕官コースならば、スケジュール管理能力、料理、ヘアメイク、スタイリング、清掃など、政官が表立って活動するためのサポートに必要な分野に秀でている人なら、どんどん売り込むことが可能です」

「でも、沢渡くんが今皇太子を務めているということは、同じ世代のライバルは不利ということになりませんか?」

…確かに。結城も、タイミングの問題で、皇太子になることはなかった。

「しかし、僕の身にも何があるかわかりませんから、次期皇太子を指名するようにとは言われています。また強力なライバルが登場すれば、事情が違ってくることもあるかもしれません」

今度は、おぉーっと、客席からためいきが漏れた。僕だって、自分の地位に胡座をかいているわけではなく、いつも危機感を持っている。

しかし、こうして、高校生のうちから、社会や自分の将来についてあれこれ考えるのはいいことだと思う。僕にしかできないことをしていこう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です