今日は終業式。クリウスに入学した当初は、場違いなところに来たと思っていたのに、素敵な人に出逢ったおかげで、今はとても充実している。
その人が、今生徒会長としてステージ上でスピーチをしている。
「明日からの春休みでは、普段はできないことに時間を割いて、リフレッシュしてください。ただし、羽目を外しすぎないように」
今日は、ニコリともせず、仕事モードの顔をしている。
先日、議会報告会のときにも思ったけど、希はいろんな顔を使い分けている。それが時には私に疎外感を感じさせて、一瞬、この人は本当に私がよく知っている人なのかと思わされてしまう。
「新学期からは、新入生も加わります。みなさんは上級生として、ふさわしい行動をとるようにしてください。それでは、また始業式でお会いしましょう」
上級生か。希や朝霧先輩のおかげで、今年の入試の倍率は凄いことになったと聞いている。今は居心地のよい演劇部にも、後輩が入ってくるんだ。私は大丈夫かな?
いやいや、そんなことを考えている場合ではなく、終業式が終わったら、とある場所に来るようにと言われている。生徒会長様が、私がよく知ってる希に戻ってくれる。
「会いたかった」
希は入ってくるなり、私をギュッと抱きしめた。
「ごめん。羽目を外したのは俺だった。今後はやりすぎないように気をつける。なにかされてない?」
「それは大丈夫」
言うと、手を緩めて、最高の笑顔を見せてくれた。
「もうすぐ誕生日だね。一緒に過ごせるのを楽しみにしてる」
「うん。どこに行くの?」
「ごめん。ホントは深雪の願いを叶えてあげる日なのに、僕のわがままに付き合ってもらってもいい?一人では行きづらい場所なんだ」
え?
「私なんかでいいの?」
「深雪となら、一緒に行けそうな気がするから」
そんな重大な出来事に、私を誘ってくれるの?でも、単純に浮かれているわけにもいかない感じなのね。
「深雪とは、これからのことも一緒に考えていきたいから」
希がそんなせつなそうな顔をするなんて。…こんな顔初めて見た。