毎週会えることになっているセカンドハウスで。
一応昨日も会ったんだけど、希は待ちきれなかったと言わんばかりにぎゅっと私を抱きしめた・・・。
「深雪はどう思った?俺、納得いかないんだよね」
昨日の電話ではもうそんなことなかったけど、部活の時もまた表情が冴えなかった。希にとっては災難続きだったのかもしれない、入学式、朝霧先輩のこと、そして部活、と。
部長はみんなが納得して選んだはずだった。希は完璧主義者だから、もし部長になったらすべてにおいて仕切らなければ気が済まなくなるのに物理的に不可能だと、村野先輩に任せた。そしてそれは順調に行っているかのように見えたけど、やっぱり希は仕事柄極上の芸術に触れることが多いので、そこからインスパイアされるものが多く、もっといろんな新しいことを試したくてしょうがないらしい。
「正直に言っていい?希の中にはすでに具体的なビジョンっていうの?そういうのがあるのかもしれないけど、私たちは高校生だし、素人なのよ。一から説明してくれなきゃ分かんないよ」
やっぱりそうか、と希は少し面倒くさそうな顔をした。
「俺も、新入生歓迎会に関しては本番直前だから、このまま行くしかないと思ってる。学内行事でしかないから大丈夫だろう。でも、コンクールとなると話は別だ。俺たちは昨年清水先輩のおかげで全国優勝することが出来たけど、現状では二連覇は難しいと思うよ。だから今から新作に挑むより、いっそのこと今回の『校則ゼロ革命』をリニューアルして勝負しようかと思ってる。企画的には面白いと思うんだ、もう少しアレンジを加えたい・・・。俺が責任を持って仕上げるって言ったらみんなついて来てくれるかな?」
希が!願ってもないことじゃない!
「でもスケジュールは大丈夫なの?」
「はからずも、例の一件のおかげでスケジュールには比較的余裕が出来てきた。陛下が『働きすぎの国民のためにも、率先して休みなさい』とおっしゃってくださっているから・・・」
本当は本意じゃなさそうだけどね。
「ただ、村野さんがよくは思ってくれないんじゃないかと心配で。今までもみんなはたくさん練習を積んでくれていたのに、たまにしか行かない俺が『ここは変えたい』なんてあっさり言っては、振り回してきたような気がしてた。みんなも嫌そうな顔をしてただろ?」
「確かにそれはあるよ。いったん覚えたものをまた覚え直すことになると、早めにそう言ってよね~って話になる。でも、ちゃんと来てくれるんだったら何の問題もないわけじゃない。いつも希待ち・・・って感じだったし、希もちゃんとやり遂げることが出来るんだったら、ストレスもたまらないでしょ」
「俺ってそんなにストレスたまってそう?」
希は?と小首をかしげた。
分かってないなあ、もう。言っちゃおうかな?でも恥ずかしいな。どうしよう。でも二人きりだし、一度は言っておかなきゃいけない気がするから・・・。
「何だよ、言ってくれよ」
うん、よし。
「本当は、希がキレた時、怒られるのが怖いんじゃないんだよ。私のことをメチャクチャにしそうなことのほうが・・・」
あ、言っちゃった・・・怒ったかな?思わずうつむいてしまったので、こわごわ見上げてみると、アイタ~といった様子で、ソファーの肘にどっかりともたれかかり、手の甲に額を預けてダウンしていた。・・・ほら自覚あるんでしょ。
「俺ってケダモノか?」
「・・・そこまでは言ってないけど、目が爛々と輝いている時がある。この間ももそうだった」
「俺、立ち直れないかもしれない・・・」
こんな顔、絶対他では見れないよ。こう言っちゃなんだけど、希がひるんでいる姿、かなりかわいい・・・。ずっと見ていたい、私しか知らない希。
あまりの沈黙の長さに、希があれ?と訝しげにうっすらと目を開いた。
「お前なあ!」
・・・多分私がニコニコしてたものだから、一瞬にして眼力が備わった。うわ、こわっ!・・・けど、緩められた、ほっ。
「そんなヒトの機嫌を伺うような真似するなよ。俺はお前が一番怖いよ・・・」
え?希は私を・・・?