「沢渡、おはよう」
「おはよう」
「沢くん、おはよう!」
「おはよう」
生徒玄関を通って教室に向かう時、みんな待ち伏せしてるんじゃないかと思いたくなるほど、凄い挨拶攻撃に遭う。しかも何故か名前つきで。
「おはようございます、殿下」
「おはようございます」
しかし、朝から学長が普通に廊下を歩いていらっしゃるなんて、かなり意外。
「殿下のおかげで、我が校に挨拶が広まっていると先生方に言われましてね、・・・いや実際、聞きしに勝るものがありました」
学長と話していると、今度はみんなが僕の肩を叩いたり、手を振って通り過ぎて行く。一応、話の邪魔はしないようにしてくれてるんだね。
「学生は、勉強はもちろんですが、社会に出るための一般常識をもっと学ぶべきだと思います。そのためにはやはり場数を踏むことが重要ですから、環境から変えてあげなければならないのではないでしょうか?」
「ごもっともなご意見ですね、こちらが教わってばかりで恐縮です。・・・殿下には学生生活を楽しんでいただこうと思っておりましたのに」
「いえ、十分楽しませていただいていますよ」
朝から登校した時には、決まって立ち止まるポイントがある。その時間、その場所で隣の校舎を見ると、彼女が微笑んでくれているのだから。