5/2 (火) 23:30 激務の果てに・・・

今日から修学旅行・・・なのに落ち着かないよ。宿泊先のホテルはスウィートルーム・・・は、さすがに学生にはふさわしくないということで断ったそうだけど、それでもジュニアスウィート。しかもこんなに広い部屋なのに一人きり・・・。沢渡はとある地方都市で今日まで会議があって、終わり次第来るそうなんだけど、もうしばらくしたら日付けが変わってしまう。

ピンポーン。

やっとだよ。お疲れさま。ドアを開けるとしゃきっとした顔で、でも入ってドアが閉まった途端、

「疲れた~~~~~」

だらぁ~っと加藤さんにもたれかかった。うっ。

「煙草臭い」

「ゴメン、シャワー浴びてくるから」

もう目も半分開いていない状態だけど起き上がって、ジャケットを脱ぎネクタイをはずし・・・真っ直ぐバスルームへと消えて行った。煙草を吸う人に会っていたのかな?僕は、煙草の匂いがあまり得意ではない。

「随分遅くまでかかったんですね」

「はい、難航いたしまして、最終電車に間に合わないのではないかと、ヒヤヒヤいたしました。殿下は徹夜続きでいらっしゃいますから、すぐに休ませて差し上げてください。・・・私も煙草臭いですか?」

いいえ、加藤さんのはまだ大丈夫。

それにしても、ただでさえ仕事に忙しいのに、部活の面倒まで見て、本当によく身体が続く。今更修学旅行なんて・・・と一旦は断ったそうだけど、陛下に押し切られて、参加することになったそうだ。でも結果的にはよかったんじゃない?羽休めに。僕だって親友と一緒に旅行するなんて久し振りだし、かなり楽しみにしていたんだから。

その間にも、加藤さんは慣れた手つきで荷物を開けて服はハンガーに、そして中の音を一瞬聞きに行って、お風呂上りの飲み物まで用意している。ついでに僕の分まで。考えようによっては加藤さんが一番大変な気がする。修学旅行は仕事じゃないのに、身辺警護をしなきゃいけないんだから。そのかいがいしさは、まるでお母さんのように見える。

「あぁ~、さっぱりした~」

濡れ髪を拭きながらバスローブ姿の沢渡が登場し、ソファーに腰掛けてグラスに口をつけ始めた。そこへ加藤さんがやってきて、ドライヤーで髪を乾かす。

「疲れてるんだろ?先に寝てもいいよ」

「え?でも、久々に朝霧とゆっくり話したいこともあるし、なんだかもったいないな」

相変わらず優しいね。でも、加藤さんがさっと口を挟んだ。

「殿下、マッサージをいたしますので、ベッドに横になってください。朝霧さんも、よろしければそちらのほうへ」

そうだね。沢渡も素直にベッドにうつぶせになって、気持ちいい~と声を漏らしている。ここは仕事の話はなしで、楽しい話がいいよね。そうだ、夕食の時のこと。

「さっきね、みんなで夕食をとったんだけど、僕が部屋に一人だって言ったら、みんな来たいって言い出して大変だったんだよ」

・・・あれ?相槌は?

「もうお休みになっていらっしゃいます。ご協力ありがとうございました」

速攻だね。でも僕は、これと言って何もしてない・・・。加藤さんとしては一刻も早く眠らせてあげたかったんですね、さすが側近。僕も長く親友をしているので知っている、首が急所だから、揉むと一発で意識を手離すのだ。もちろんそこに限らず、そのままマッサージしてあげている様子だけど。

「朝霧さんも、お疲れでしたらマッサージいたしましょうか」

「いえいえ、僕は結構です。加藤さんのほうが、お疲れなんじゃないですか?」

「いえ、私など殿下とは比べようがございませんので、お気になさらず」

はあ。他人事のようだけど、皇太子って大変なんだな~。僕はせめてヴァイオリンで起こしてあげようかな。話のほうはま、だ四日あるからこれから出来るでしょう。

お疲れさま、でも働きすぎには気をつけなよ。

 

 

 

 

 

 

 

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