5/7 (日) 7:00 このまま時が止まればいいのに・・・

あれこれ考えていたけど、会ってしまえばそんなものは一瞬のうちに消え去ってしまった。深雪の笑顔一つだけで、何もかも許せて救われた気分になってしまうのだから、不思議なものだ。

「やっぱり希じゃなきゃ、ダメ。私、どんなことがあっても待ってることに決めたから」

その、やっぱり、っていうの、俺的に結構傷つくんだけど・・・。他の男と比べたから、その言葉が出てくるわけだろ?でも、何も聞かないことにした。

遠足の次の日、俺はイライラしていたけど、変に疑ったりはしないで、ただ話していただけだ。電話もゆっくりしていなかったから、話したかっただけだよ。・・・ちょっと強がってるけど。深雪や吉岡に対して怒っていたというよりは、悲しかったんだ。・・・上手く言葉に出来ないんだけど。

「俺も深雪じゃなきゃダメなんだ。・・・単なるわがままかもしれないけど、どこにも行かないでくれ」

「もう、どこにも行かないよ。ずっとついて行くから」

だから、もう、って言わないでくれよ。また落ち込むじゃないか。・・・俺の反応の鈍さに、顔色をうかがうように不安げに覗き込んだ。

「希・・・?私、言葉が足りない?」

「うん、もっと」

「希のことが大好きだよ」

「もっと」

「・・・世界で一番愛してる」

「もっと、もっと」

「え~、恥ずかしいよ」

「今更恥ずかしがる仲でもないじゃないか」

言うと顔を赤らめたので、腕の力を緩めた。

「いやだって。ごめんなさい・・・やっぱり怒ってるんだよね。本当のことを言うと、私、ちょっと気持ちが揺らいじゃったの。だって寂しかったんだもん。でも吉岡くんとは何にもないよ、ただ話をしただけ。それだけでもよく分かったの、希じゃなきゃダメなんだって。・・・希が私のことをどんなに大切に思ってくれていたのか、知らなかったわけじゃないけど、私・・・」

「分かったよ、もういいから」

改めて、俺から見ればかなり小柄で華奢なその身体を抱きしめ、肩口に頬を埋めた。今度は嬉しくて泣いてしまいそうになるだろ・・・。

「もうちょっと、寝かせて」

出来ればずっとこうしてまどろんでいたい。多分深雪が思うよりも、ずっと深く愛してしまっているんだよ。もう一人でなんかいられない。

・・・どうしてだろう。仕事に関しては自信を持っているのに、深雪のことを思うときは、時々自分でも情けないくらいに不安に苛まれることがある。今はこんなに幸せでも、明日はそうとは限らない・・・と思ってしまうことがある。結城や、加藤や朝霧に対しては、絶対的な確証があるのに・・・。

深雪が髪をそっとなでてくれる・・・。このまま時が止まればいいのに・・・。

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