昨日は作品としての出来について手短に批評をしてきたが、みんな深雪のことを聞いてきたので、「ちょっと気分が悪いって言うから」と答えておいた。それはあながち間違っていない。
見ている僕としても驚いた。嫌がらせというと、どうして首を絞めることになるのか?テレビの世界だと思っていたけど、そんなに一般的になっているのだろうか?しかもその場を助けに行く吉岡・・・思いきりあの場面がフラッシュバックしてしまった。深雪にも相当こたえていた様子だ。帰りにはもちろん、その話は一切しなかったけど・・・。
今日は少し早めに部活に行って、吉岡を呼び出した。
「深雪先輩のことですよね」
ずっと気になっていたのだろう。僕から切り出す前に聞いてきた。
「マズイシーンでもありましたか?顔が真っ青だったんですけど・・・」
・・・ビデオは見ないで、深雪ばかり見ていたよな。
「ここだけの話にしておいてほしいんだけど、深雪も昨日のビデオドラマの彼女のように、嫌がらされをされたことがあったんだ」
「首に手をかけられたってことですか?」
詳しい説明はしたくなかったので、頷くだけにしておいた。
「誰も知らないことだし、もちろん君に他意などあるはずもないから責めるつもりはないんだけど、今後その話題は持ち出さないように。ビデオは封印してほしい」
さすがの吉岡もショックだった様子で、今度は彼のほうが青ざめていた。
「分かりました・・・」
じゃあそういうことで、と僕は先にその場をあとにしたけれど、少しばかり安心した。これで当分は深雪には近づかないだろう。何もしていないけれど、自ら墓穴を掘るなんて・・・。
それにしても、僕たちのことを見ていたかのように、リアルに再現してくれるから困ったものだ。オーディションの件といい、今回の件といい・・・。このペースでいくと、これからどうなるんだ?と心配せずにはいられない。災いをもたらしてくる、疫病神のようだ。
引き続き気は抜けない、端から抜くつもりはなかったけれど。