5/19 (金) 22:00 内なる漆黒の世界

窓の外を通り過ぎていく週末の華やいだ夜の景色とは裏腹に、気がつくと僕は、内なる漆黒の世界へと思いをめぐらせていた。

僕は家族というものを美化しすぎたのかもしれない。

引き離された当初はお互い寂しい思いをした。でも人間はだんだん慣れていくことができる。僕がそうだったように、家族のみんなも僕がいない生活が当たり前になっていったのではないか?・・・考えてみれば、僕はまだ幼かったけどみんなは大人だったんだから、意外と平気だったのかもしれない。

でも僕にはいつまでもトラウマとして残っていて、いつしか勝手に理想像なるものを描いていたようだ。欲しいものは何でも手に入れてきた。努力すれば手に入れられないものなんてないと思っていた。だから手に入れられないそれには、どんどん付加価値がついていき、偶像のようにまつりあげられるまでになってしまった。・・・物に対してならともかく、人の心という目に見えないものにもすべて当てはまるはずなどないことに、気づきもせずに。

僕はわがままな人間なんだ。形にこだわりすぎているんだ。

深雪には「他の人と比べてはいけない、自分たちの愛し方で・・・」なんて言っておきながら、肝心の僕はこの始末。

どうして満足できないんだろう。どうして変に責任感を感じたりするのだろう。

昨夜も兼古先輩に対してはプレゼント選びにも本当に気を遣ったし、少しでも力になってあげたいと思った。いつも先輩は喜んで、頼りにしてくれているから。

頼りにしてくれている・・・。

これがキーワードだったのかもしれない。僕が愛情を注ぎ込んでいると自負できる相手・・・深雪や朝霧を始めとして学校の仲間たちは一様に、僕のことを頼りにしてくれている。僕が手を差し伸べなければ・・・と思う。

逆に僕に愛情を注ぎ込んでくれる相手・・・結城や加藤のことを僕は非常に頼りにしている。彼らもそうなのかな?そうだよきっと。僕が頼めば与えてくれる、から。

でも家族は・・・どちらにも当てはまらない。かろうじてまだ仲がいいほうだと言える兄は、建築のことを教えてくれるから、頼りにしていると言えるだろう。・・・僕は!

悲しい生き物だ。つまり相手のことを勝手に格付けしているということだ。尊敬できる相手以外は見下しているも同然。誰とも対等に付き合っていないんだ。

いつからこんな汚い人間になってしまったんだろう。いかにもな美辞麗句を並べたて、ひとりで被害妄想を抱いている。なんて情けない・・・。そしてまた加藤や結城に慰めてもらおうなんて考えるんだろう・・・サイテーだ。

愛を受ける資格なんて、ない。

もっともっと強くならなければ。

綺麗事ばかり並べたてていても、始まらない。

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