5/20 (土) 21:00 試験前

「え~と、これ教えて」

深雪が指した問題を、僕が読んでいく。

これが学校の宿題ならともかく、家庭教師の先生の宿題だなんて、深雪もよく平然と言えたものだよ。二人で会っている貴重な時間なのに、勉強に費やさなければならないなんてもったいない。でも本当だったら、家庭教師になんて任せたくないよ。俺も一度会ったことがあるけど、せめて女の先生にしてくれよな。他人の気も知らないで。

「そっかぁー、なるほどね。やっぱり希のほうが分かりやすい」

「そう?」

キラリ☆・・・たった一言で簡単に機嫌が直ってしまう俺。

「今のが分かったら、これも解けるんじゃないか?」

「出来るかな?」

「出来るようになれよ」

はーい、と口を尖らせて、式を解いていく。

「ここで今のを使うんだよね」

「そう」

計算を間違えるなよ・・・。ペンが一瞬止まるたびにドキドキしてしまう。おっ!

「どう?合ってる?」

よかった。

「合ってる」

やったぁーと一人で拍手してVサイン。おいおいこの程度でそれじゃ、これからどうするんだよ、と内心思ったものの、

「今のは多分出るから覚えとけよ」

頭をなでなでしてあげた。平和だよな~。数学の問題が一つ解けただけで、こんなに喜ぶなんて。・・・他人のこと言えないか。

「じゃあ、この調子で次のも行ってみよう」

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