5/28 (日) 9:00 捜査会議

現在殿下のごく身近でお仕えしているのは、側近として加藤さん他五人、秘書として松本さん他三人、マッサージ師一人、スタイリスト一人、そしてヘアメイクの私となる。しかし本当に身の回りのことまでお近づけになるのは加藤さんだけなので、相変わらず先日あれ程までに怒っていらした理由が分からない。そういうわけで時々、お側仕え同士、事態の断片を持ち寄ってつなぎ合わせようとすることがある。

「でも原因は間違いなく、婚約の儀に関係していますよね。有紗さまのことを好いていらしたりするのでしょうか?」

「深雪さんと正式にお付き合いなさる前は、有紗さまとのことが噂されていたんですよ。でも目撃した者が誰もおらず、結局は噂の域を出ませんでした」

「でも私が拝見していて思いますのは、殿下は深雪さんのことをとても深く愛していらっしゃるということです。殿下が深雪さんのことをお話しになる時、本当に嬉しそうなお顔をなさいますよ」

「それは私たちには一生分かり得ないことでしょうね」

秘書のお三方を中心に、顔を見合わせる方多数。多分これは私しか知らない情報でしょう。去年の文化祭でもメイクさせていただけるほど、学校のことはオープンに、また深雪さんのこともかなり話してくださる。・・・ある意味私だけの特権かも。

「それでは深雪さんにお会いになれないことで、イライラされたということですか?」

「・・・いえ、その程度ではあれ程まで怒られることはないと思いますが」

とにかく今までにない凄い迫力だったんだから。実は・・・お詫びにと、このあと夕食のお誘いをいただいてしまった。

「結局は誰にも分からないということですか?被害を被ったのは仲野さんだけで、我々には普段とさほど変わらない態度でしたしね」

それがまるで幻であったかのように、仕事は平然となさるから逆に怖い。

「その辺りが、殿下が殿下たる所以ですよ」

「しかし、信頼してくださっていないのではと思う時もありますよ。いつも最終的には加藤さんですから」

「そんなことありませんよ。早く書類を仕上げると、大変喜んでくださいます」

「私は殿下のあのようなお姿は知らないほうが幸せだと思いますが?それも殿下のお気遣いなのですよ。だから私たちも気遣いでお返しするのが務めなのではないでしょうか」

私は殿下にお仕え出来るのをとても光栄に思っています。みなさんもそうですよね。

「私も今の仕事に誇りを感じております。原因が深雪さんでないのでしたらやはり、あのお二方ということになりますよね。視察から戻られたらまた殿下のご機嫌が悪くなるかもしれません」

「そうですよね。でも原因はしっかり突き止めましょうよ。そうすればもっと具体的な対策を講じることが出来ますから」

「単なる好奇心もおありでしょう?」

笑う方が多い・・・いや、みなさんみたい。・・・結局は気になってしょうがない、それだけなんじゃないですか。殿下に悟られないように慎重に、更なる捜査を進めることにしましょう。

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