昼休み、学食で友人と話していると、携帯が震えた・・・沢渡からだった。
「今夜兼古先輩がドラマに出演するから、君の意見も聞かせてよね」
・・・ごく短いメールだった。しかし相変わらずというのか、忙しいくせにそうは感じさせないところがある。僕のほうからも時々書くけど、彼からのほうが断然多い。
「誰から?」
沢渡からだと答えると、
「すっかり沢渡と友達になってるよな。あんなに嫌っていたくせに」
ほら見たことかと言わんばかりに、右まゆをぴくりと上げた。もともと彼は友人でありながらも客観視しているところがあるので、最初は絶対的に反発していた僕がだんだん傾いていくのが、とてつもなくおかしいらしい。
「友人ってわけではないけど、認めるところはある・・・認めざるを得ないって言うか、な」
「どうせならどこまでも闘って欲しかったな」
いや、そういう問題じゃなくて。・・・ちょっと前までそのつもりだったことは、ほとんど忘れかけてしまっている。
今では世間的にも僕と沢渡に交流があることは知れ渡っていて、世間知らずな一年生が親しみを持って話しかけてくることがある。二、三年には一目置かれているところがあるのに・・・その見えない壁は今も存在しているはず。一応そういう時でもわざと冷たくあしらったりはしないで、普通に受け答えしているけどね。
「あれ?返事は書かないわけ?」
すぐに携帯をしまって食事を再開した僕に、いぶかしげに尋ねる彼。こればっかりは、テレビを見てから返事を書くというものだ。
それにしても、イチイチ僕の意見を求めるなんて、勉強の邪魔をするつもりか?一応言われなくても見るつもりだったけど・・・ただし模試が終わってから。
ところでアイツはどんな風に勉強をしているのだろう?なんだかんだ言って裏では努力を重ねているのだろう。じゃあこんなメールを書いてくるということは、余裕がある素振りを見せたいだけじゃないのか?悔しいじゃないか、負けていられない。
慌てて携帯を取り出し、メールを書いて送信。再び胸ポケットにしまって、一つためいきをつく。これでよし、と。
「ちゃんと張り合ってるな~」
向かいでは彼が面白そうに笑っていたけど気にしないで、今度こそ食事を再開することにした。