昨夜はなかなか眠れなかった・・・。しかもムキになって走ったせいか、体のあちこちが筋肉痛になっている。何やってんだ、僕は・・・。
朝、用事があるフリをして、校内を歩いていた。取手さんに会いたくて。別に会って、どうこうしようというのではない、ただ一目会いたくて。
もう観念したよ、僕は取手さんのことが好きなんだってよく分かったよ。誤魔化すことなんて到底無理なんだって。そう自覚することで少しはイライラが治まったような気がする、ただこの想いを伝えるかどうかはまた別の話で・・・。
「お、おはよう」
もちろん偶然を装って、でもいつもとは違い今日は僕のほうから声を掛けた。彼女は女友達と一緒に教室へ向かうところのようだ。
「今日の模試は沢渡くんも受けるんだね。本当の実力はどのくらいか楽しみだよね」
彼女は嬉しそうに言った。結局は沢渡のシンパなのか・・・。
「でも、絶対負けないでよ。イストの名誉にかけても」
え?
「え?じゃないよ、いつもの早川くんらしくない。頑張ってよね」
「う、うん。もちろん」
みるみるパワーがみなぎってくるのを感じた。取手さんが応援してくれるなんて・・・これはいかにして上手く負けるかではなく、勝ちに行かなければ!!!
「ありがとう、頑張るよ」
じゃあ、と、そのまま別れて教室へ。・・・会えてよかった。彼女の一言でこんなに元気になれるなんて、沢渡がいつも語って聞かせる「愛のパワー」とやらの効力が立証されたようだよ。
よし、沢渡。首の根っこ洗って待ってろよ!今日の僕はいつもと違うんだから。・・・かなりいい感じで解けているよ。