8/22 (月) 10:30 悪魔降臨

実は演劇部の練習に頭を悩ませている。・・・どうもヒロインがしっくり来ない。

折角、沢渡が忙しい中時間を割いて部活に来てくれて、いい演技を見せてくれているというのに、それに張り合えるだけの力が彼女にはない。それは最初だけだろうと思っていたのだけど、美智の表情もずっと冴えないままだ。

「ちょっと止めて」

今日もたまらず、美智がストップをかけた。 Continue reading “8/22 (月) 10:30 悪魔降臨”

8/18 (木) 22:30 私の天使

“希さん、ホントに怖いですよ。みんな、私じゃなくてよかったって言ってます”

・・・。

「失望させること言わないで。部長からは泣かせるくらい怖くって言われているのに、まだ実現できていないし・・・何かが足りないんだよ」

“もう十分です。私だったら絶対泣いてますよ” Continue reading “8/18 (木) 22:30 私の天使”

8/16 (火) 20:00 写真撮影

大喜びしたのは仲野さんで・・・、

「女の子がクラクラするような、美しい悪魔に変身させていただきます!」

と、メイク中にもいろいろなアイディアを出してきてくれたのだけど、今日の仕事も大事なんですよ!僕が表舞台に出るにあたって、名刺代わりとなる写真を撮影してもらうのだ。 Continue reading “8/16 (火) 20:00 写真撮影”

8/15 (月) 10:30 新しい台本

「大丈夫ですよ。深雪さんは特に気にされていないご様子でしたし、それだけ打ち解けていらっしゃるということでもありますし、いい傾向なのではありませんか?

加藤はそう言ってくれたけど、折角二人きりになれたのに、リラックスしすぎて寝てしまうだなんて、男として情けなさ過ぎる。結城には絶対言わないように、と口止めするのが精一杯だった。 Continue reading “8/15 (月) 10:30 新しい台本”

8/14 (日) 16:00 二人きりの部屋で

残念ながら、パパは出かけるとのことだったので・・・、そしたら希さんの家に呼んでもらえることになった。それでも、迎えに来てくれたときにはまた、ママに挨拶をしていたけど・・・緊張した。

今日希さんは、白いTシャツに黒のパンツ、そして黒のジャケット、でも全体的にカジュアルなファッションで、モデルみたいにカッコイイ!その希さんの実家というのも、白と黒のモノトーンでまとめられた新しい建物だったので、またイメージ通り。

「10歳年上の兄貴が建築家なんだよ。僕もこの家はかなり気に入っているんだけど、たまにしか帰っていないんだよね・・・ああ、そうそう、ウチはちょっと変わってるけど、気にしないでね」

え?ご家族は変わっているの?

「お帰り希。また背が伸びたんじゃないの?」

うわ、お母さんが若くて綺麗。ちょっと年の離れたお姉さんという感じ。

「うん、少し伸びたみたいだけど、それはおいといて。・・・僕の彼女を紹介するよ。こちらは川端深雪さん」

「初めまして。川端深雪と申します」

「こんにちは、この間妹役をしていた子ね。我が家は男ばっかりだから、女の子は大歓迎よ。ゆっくりしていってね」

ああ、気さくな感じでホッとした。折角なので家を見せてもらいながら、お父さんとお兄さんも紹介してもらった。お兄さんは希さんに似ているけれど、大分大人な感じ・・・それは10歳年が開いているせいもあるけど、殿下とはまた違って硬派な感じの落ち着きがある。・・・けど、結城さんよりは親しみが持てそう。

「そしてここが僕の部屋。・・・1年の時はわりと住んでたんだけど、最近はほとんど帰ってないから、殺風景かも」

え~、宮殿よりも殺風景とは!・・・と思ったけど、広くないからそれほど気にならないかも。机とベッドとテレビ、電子ピアノ、ミニコンポ。ごく最小限の生活・・・本すらもほとんどない。

そのとき、希さんのお母さんが飲み物を持ってきてくださった。

「夕食はみんなで一緒に取りましょうね。深雪ちゃん、何か苦手なものはある?」

いえ特には・・・。すると、またあとでね、とニコニコしながら去って行かれた。

「お母さま、凄く綺麗ですよね。男の人は母親似っていうのは本当なんですね」

「え~と、その前に、祥子さんって呼んであげて。本人が嫌がるから。・・・さっきね、ウチは変だって言ったけど、ほら、僕は幼稚園を卒園したらすぐに王宮に引き取られて、しかもしばらく会うこともままならなかったんだよ。そしたら、その間に母は錯乱状態になったらしくて、今でも僕への接し方がおかしいんだ。・・・でもあの様子だと、深雪のことは認めているようだから安心して」

大変だったんですね。希さんは、宮殿で泣いていたところを殿下に助けていただいた、と言っていた。また宮殿にいるときのほうが落ち着く、とも言ってた。・・・家族のことで大変なのは私だけじゃないんだ。

その間に希さんはHDD内蔵らしいコンポのスイッチを入れて最近の音楽を流し、ベッドに腰掛けている私の元に帰ってきた。・・・考えてみれば、部屋に二人きり!祥子さんは、夕食には降りてきなさい的な話をしていたし。

「あの、先輩!・・・違った希さん!渡したいものがあるんです」

きっとキスをしようとして・・・近づいてきた綺麗な顔が、目の前で止まった。

「今日はBlue Ribbon Dayなので、よかったら」

そして鞄から細長い包みを取り出す。

「あ・・・そうか、そうだよね。最近日にちの感覚がおかしくて」

希さんは苦笑しながらも、瞳をキラキラさせながら、長い指で丁寧に青いリボンをほどき、包みを開ける。この間デートで水族館と海に行ったこともあって、選んだのはイルカのチャームがついた本のしおり。

「かわいいね、ありがとう。ぜひ使わせてもらうよ。・・・お礼をさせて」

しおりを箱に戻すと、それをベッドサイドのテーブルに置き、私の頬に触れた。部屋に入ったときジャケットを脱いでいた希さんの二の腕は結構逞しくて、私の力などではあらがえないって思ってしまう。

優しいキス。・・・でもそれがだんだん甘く、深くなっていく。

ああ、どうしちゃったんだろう、私。希さんに支えていてもらわないと、座っていられない。・・・と思ったら、ぎゅ~っと抱きしめられた。

「・・・ごめん、おかしいよね。でも知らず知らずのうちにストレスがたまっているみたいで・・・、こうしていると凄く気分が楽になるんだ」

あ・・・、あの、希さん!?・・・希さんはただただ私を抱きしめている。・・・あの~、私はどうしたら?

「疲れているなら、横になったほうがいいですよ。いつもあんまり寝てないんじゃないですか?」

「なんか、物凄く眠い・・・。30分だけ寝かせて・・・」

え・・・。希さんは、私もろとも横になって、あっという間に寝息を立て始めてしまった。あの・・・、私は抱き枕ですか?30分経ったら起こしてってことですか?

でも、初めて見る寝顔のあまりの美しさに、しばらくこのままでもいいかと思ってしまう。今だけは希さんの表情をこんなに近くで、好きなだけ見ることができるから。・・・学校にいるときとは大違いで、とっても無防備な様子に、いいのかな~と心配になるけど、昨日の言葉通り、私に対しては気を許してくれることがたまらなく嬉しい。・・・私からキスしてもいいですか?・・・いいですよね。

8/13 (土) 22:00 私だけの存在

先輩の側近の加藤さんから電話をもらっていたのだけど、さすがに夜のニュースで朝霧先輩がヴァイオリンコンクールで優勝したと放送されているのを見ると、不思議な感じがした。見慣れていた人が急にテレビの中の人になる・・・沢渡先輩もそんな風になっちゃうのかな?

すると今日は、わりと早い時間に電話が鳴った。 Continue reading “8/13 (土) 22:00 私だけの存在”