はっと目が覚めたら、まだ天井が薄暗かった。・・・ベッド脇のスタンドが点いている。
「貴くん大丈夫?大分うなされていたわよ」
・・・ああ、舞が起こしてくれたのか。それにしても嫌な夢だった。
僕たちは雪の中にいた。何がどうなったのかは分からないが、体が痛くて動くことができない。
“舞!舞!”
僕は必死で、彼女の姿を探し求めた。でも辺りは白一色の世界で、体の感覚も徐々に薄れてゆく。
“貴くん、ここよ”
その声の方向を見ると、今にも消えそうな彼女の微笑みが目に飛び込んできた。
“行っちゃダメだ。ほら、手を伸ばして!僕たちはいつでも一緒だよ”
“貴くん・・・。でも、私の手どうかしちゃったみたい。動かないの・・・”
そんなバカな、と視線をずらすと、そこにあるはずの腕がなく・・・。
「舞!・・・ああ、無事でよかった」
いきなり肩を抱き寄せた僕に、舞はワケが分からないといった表情をしながらも、背中をポンポンと叩き返してくれた。
「どうしたの?どんな夢だったの?」
・・・これは言わないほうがいいと思う。
「怖い夢だったけど、起きたら忘れてしまったよ」
そうだ、忘れてしまったほうがいい。・・・いや、僕が彼女を守ってあげなければ。昨日は沢渡くんと深雪ちゃんの幸せそうなやりとりを見たところだ。僕も舞のことを幸せにしてあげなければ。結婚したものの、新婚らしいことはあまりできていない。今は年明けに行く新婚旅行のために、仕事をどんどん片付ける毎日を過ごすのみ。
「大丈夫よ。私がついてるわ」
「え?僕は守られる側なの?」
「・・・もう、相変わらず素直じゃないんだから。・・・支えてあげる、ならいい?」
・・・支えてあげる、も、似たような感じでは?というのはさておき、
「ゴメン、まだ時間があるよね。もう少し寝かせて」
舞の唇に軽くキスをして、また横になった。