12/22 (木) 23:00 対照的に

一方で沢渡くんは機嫌がすこぶるよく、仕事にも精が出ているみたいだ。

「先日は本当にありがとうございました。殿下ももうすぐ新婚旅行ですね。その間は僕がしっかり留守を守りますので、大いに楽しんできてください」

と言われて、またギクリとした。そうだ、旅行だ。その際、雪山の上を飛行機で通過する。まさかそのときに事故が起こったりなんてことは・・・。

「殿下、どうかなさいました?」

「いや、別に。・・・そうだね、旅行はもうすぐなんだよね。最近忙しすぎて忘れていたよ」

「どのようなご予定なのですか?」

「ただただのんびりする、という計画を立てているよ」

「そうですか。どこに行かれようとも、僕へのお土産を心配される必要はありませんしね。ゆっくりなさってください」

・・・いつも何かにつけて言う、この指輪のことだね。・・・いよいよ、彼の手に渡るときが来たのか。だったら、傷がつかないうちに渡したほうがいいのかもしれないが、ここは普段通りに返しておく。

「ダメだって。僕が君のことを一人前だと認めたときに、お土産という形ではなく正式にプレゼントするから、精進しなさい」

「はい。一応申し上げておかないと殿下も寂しいかと思っただけですから、他意はありません。お土産は何でも結構です。殿下のセンスにお任せいたします」

「うん、楽しみにしていてね」

・・・沢渡くんはきっとうまくやるはずだ。これまでにも散々指導してきたから、ひとまず僕の仕事を引き継ぐことはできるだろう。もちろんまだ経験は浅いが、何が起きても対処できるだけの精神力の高さはすでに持ち合わせていると思う。大きくなったものだ。

「そういえば殿下、清水先輩が先日のビデオドラマの編集を終えて送ってくれたそうですよ」

何だ、それを早く言ってよ!

「じゃあ、みんなで見ようよ。30分後に、僕の部屋に集合!」

「分かりました。結城と加藤、朝霧にも声をかけてみます」

少しでも楽しい話題にすがりつきたくて、真夜中の上映会を開催することにした。気心の知れた仲間とできるだけ多くの時間を過ごしたい。沢渡くんの成長ぶりを確かめておきたい。僕たちの楽しいひとときを永遠にしたい・・・。

さあ、早く帰って、みんなを迎える準備をしよう。

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