「俺のほうが深雪を慰めてあげるつもりだったのに、お前の顔を見たらもうダメだな。…思っていた以上に疲れていたみたいだ」
夕食の後、希はもう我慢できないとばかりに私をベッドに押し倒し、一緒にお風呂に入り、またベッドで私を抱きしめている。
「それは当然だよ。大切な人を亡くした悲しみに浸る間もなく、大きな仕事をこなしているわけだもん。私なんかが少しでも希を癒やしてあげられるなら、いくらでも協力するよ」
「ありがとう、効く」
「それに、私も嬉しいの。…私も、希のために出来ることがあるんだって」
…希の彼女でいていいんだって思えるし。
「そうか、こういう関係でいたほうが、俺たちうまくいくんだな。俺が無理して平気そうに振る舞っていると、深雪を心配させてしまって、それでギクシャクして、お互いの心配事が増えるだけだもんな。…もう、俺、お前の前ではいい顔をしないことにするけどいい?」
そうやって甘えてくる様子が、たまらなく素敵だって、本人は自覚してないんだろうね。
「いいよ。希、かわいい…」
私のほうが抱きしめられているはずなのに、私のほうが抱いてあげているみたい。と思ったら、いきなりガバッと起き上がった。
「かわいくない!…いや、また反論すると深雪の笑顔が曇るから、いいよ、好きに言って。何言われても気にしないことにする」
そしてまた横になって私の胸に顔を埋めてくる…かわいい。何てかわいいの!
「希、大好き」
「そういうのは、いいね。もっと言って…」
「希ってホントに素敵。議会で答弁をしている姿も、晩餐会で着飾っている姿も、学校の制服姿も、落ち着いた話し方も、ピアノを弾いているところも、じっと目を見て話してくるところも、綺麗な髪も、カッコイイ顔も、意外と逞しい腕も…」
気づくと、すぅ~っと寝息が聞こえてきていた。
…綺麗な寝顔。疲れているよね。ゆっくり休んでね。