2/7 (火) 22:00 秘密の打ち合わせ

今日は、ファッションデザイナーのKZとの打ち合わせが行われている。

殿下は、響殿下や結城さん同様、KZの服がお好きで、表舞台に立たれるときにはいつもお召しになっている。そしてまた、殿下はスタイルがよく、見栄えがよろしいので、世間ではファションチェックなる企画があるくらいである。しかし、すべての国民がよく思われているわけではなく、また国民の税金を使わせていただいている以上、あまり華美になりすぎるのもよくないので、ファッション面に関しては、常に綿密な打ち合わせが行われている。

というのも、今日の目的の一つなのだが、実は、来月開催されるKZのファッションショーに殿下が出演なさることになり、そのための打ち合わせも行われている。

「是非とも、さまざまな殿下をご覧いただきたいと思いまして、まずは、晩餐会でお召しいただけるようなデザイン。続いて、普段は決して見られないようなリラックスウェア。そして最後は、ウェディングドレスの女性をエスコートする、花婿のスタイル、を考えさせていただいたのですが、いかがでしょうか?…特に最後のは、いかがでしょうか?」

KZがデザイン画を見せてくださり、殿下とスタイリスト、ヘアメイクの仲野さん、そして私も拝見させていただくが…。

「…気を悪くしないかな?」

殿下は、私のほうをご覧になる。…やはり、そうですよね。深雪さんがどう思われるのかが心配ですよね。

「ですが、殿下が実際にご結婚されるときには、正装を召されるわけですから、現実味は帯びないのではありませんか?それに、本当に素敵なデザインですから、殿下がお召しになっているところを拝見したく存じます。…が、念のために結城さんをお呼びしましょうか?」

「…そうしてくれると助かるよ。後でぐちぐち言われると、たまらないからね」

殿下の心配は、結城さんのことも含まれていたのですね。ということで、端末を操作しながら、結城さんにメッセージを送っていると、気になる会話が耳に届いてきた。

「あの、結城には絶対内緒でお願いしたいことがあるのですが、僕のためのドレスをデザインしていただけませんか?」

ドレスですか!?と一同驚く現場。

「卒業式の後に、部活の打ち上げがあるのですが、とある先輩から直々に、女装をしてくるようにとのお達しがあったんです。それで、どうせなら、期待を上回るような出で立ちで登場したいと思うのですが、協力していただけませんか?」

「それはぜひ喜んで!」

KZが、間髪入れずお答えになる。見ると、仲野さんも目を輝かせている。

「かしこまりました。どういった系統になさいますか?」

「それはもちろん、セクシー路線で」

殿下、そんなことをおっしゃって、大丈夫ですか(笑)?…しかし間もなく、ドアが開く音がしたので、一応目で合図をし、話をファッションショーの衣装に戻す。

「随分盛り上がってるんだな。…俺にも見せてくれないか」

私も、緩んでいた顔を引き締めて、デザイン画に目を移す。…殿下がお召しになる姿が目に浮かぶ。その日が待ち遠しい。

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