2/6 (月) 22:00 信頼関係

響殿下ご夫妻がお亡くなりになってから、早くも1ヶ月が経とうとしている。そのような中、私は陛下直々のお呼びをいただいた。

「沢渡くんに関する報告書と、沢渡くんが書いた部下の勤務評定を読ませてもらったよ。世間的な評判から言っても、沢渡班はうまく機能しているようだね。加藤くんもよくやってくれていると思うよ」

もったいないお言葉でございます。

「しかし、気になる点がないわけではない。仕事と私生活のバランスのことだ」

やはり、そこをついてこられますか。

「いや、今まで私は、仕事で結果を出していてくれさえすれば、私生活のことは目をつむってきた。響くんについてもそうだ。彼はよく、一人で警護もつけずに出かけることがよくあり、まあ私も気持ちが分からなくもないから大目に見てきたが、沢渡くんに関しては、まだ若い上に注目も集まっているから、私生活に関してもしっかり目を行き届かせてほしいと思っている」

「それは、どの程度まででしょうか?」

私の様子をご覧になり、陛下はふっと微笑まれた。

「心配しなくていい。これは、悪い意味ではない。仕事も大事だが、私生活も大事にしなさいという意味だ。…沢渡くんを見ていると、休むことも大切だということがよく分かるよ。週末、充実した時間を過ごしているんだろうね、週明けの朝からとても元気で、みんな驚かされてばかりだよ」

なるほど、そういうことですか。

「いい仕事ができるように、私生活もしっかり管理してあげなさい。沢渡くんのことだから、なかなか休みたがらないとは思うが、そこは側近の力の見せ所だよ」

「承知しました。引き続き、殿下のことを第一に考え、お仕えさせていただきます。では失礼いたします」

と、陛下の執務室から下がってきたのだけど、やや感覚にズレがあることに、気づかずにはいられなかった。殿下は、響殿下がお亡くなりになってから、憔悴しきってしまい、更に即位してからも、気丈に振る舞っていたけれども、周囲の私たちにはお疲れになっているのは明らかで、結城さんと相談の上、深雪さんとの時間を過ごしていただくことにした。…正直なところ、二人で意見を押し通すことにした。結果的に、陛下にも認めていただけることになったのはよかったことだけど、やはり、沢渡さんのことは、私たちでお守りしなければならない、と決意を新たにした。

そして夜、結城さんと会う時間があり、そのことについてお話しさせていただいた。

「いずれにせよ、沢渡がいい働きをすれば、こちらが正義ということになるんだ。最近沢渡も、加藤にはかなり心を開いているようだな?」

はい、そう思います。殿下が即位されて、私も急に殿下付きの側近になることになって、私たちにはより強い連帯感が生まれた。降りかかってくる問題が更に増え、まさに戦友として一緒に闘っている気分である。…移動のときなど、二人だけの時間ができると、沢渡さんはここぞとばかりに、いろいろな打ち明けごとをしてくださるようになった。…そのことが私には嬉しい。

「だから俺からも、沢渡のことを頼んだぞ。よろしくな」

はい、かしこまりました。一番近くにいる人間として、殿下の変化を見逃さないよう、十二分に気を配ります。

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