2/8 (水) 23:30 側近としての務め

深雪さん補給のおかげで、何とか持ちこたえていらっしゃるが、週の半ばにあると疲労が色濃くなってこられる殿下…。平気そうに振る舞われているが、過密スケジュールに加えて、議会のためのお勉強もなさっているので、相当お疲れのご様子である。

しかし、気分転換のためにも、また体力と体型を維持するためにも、週に3度は、必ずトレーニングをしていただいている。今夜は自室のランニングマシンで走っていただいた後、軽くウェイトトレーニングをするというメニュー。…もちろん、その間に、ニュースをご覧になって、情報収集をなさっている。

「あ~、疲れた」

「お疲れさまでした。お風呂が沸いておりますので、どうぞ」

バスルームには、殿下の今日のご気分に合わせて、入浴剤とアロマキャンドル、音楽をご用意させていただく。そしてその間に、部屋の資料を整えたり、湯上がりの飲み物とデザートを用意したり、そして今日はマッサージの準備をさせていただく。

「どうぞ。疲労回復に、今日は酸味のあるものをご用意させていただきました」

「…そんなに疲れているように見える?」

「ええ、私の目にはかなり。ドクターも心配されていて、血液検査を受けていただくように言づかっておりますので、ちょっと失礼いたします」

そして、指先に少し針を刺して血液を採取する道具を使わせていただく。

「加藤、できればそういうのは、僕に知られないようにこっそりやってくれる?」

はい?それはどういうことですか?

「僕自身は疲れていないつもりなのに、傍から疲れているように見えるって言われると、疲れがどっと出たような気になるんだよ。一応気づかれないように頑張っているわけだから、現実に引き戻さないでくれないかな?」

「それで、気づかれないように、とおっしゃるのは?」

「だから、例えば僕が寝ている間に注射を打つとか、こっそり何かを飲ませるとか、そういう処置をするのに、わざわざ僕の同意を得る必要はないから、どんどんやってくれて構わない。信用しているから」

それは…。

「もう、いろいろとやることが多すぎて、自分では手が回らないことはよく分かったから、僕があまり興味のない点に関しては加藤に任せたよ。食事とか、睡眠とか、放っておいたら一向に手をつけないよ。だから、そういうところは加藤が管理してくれると助かる」

「よろしいんですか?」

「うん、すでにこういう会話自体、僕にとっては無駄な時間に感じられる。…人間としてダメなんだよ、僕は」

いえ、そうは思いませんが…。だが人間、得意分野もあれば、不得意分野もあるのが当然だ。殿下がそうおっしゃるなら、殿下の健康管理は、私が一手に引き受けさせていただくことにする。

「分かりました。では、歯を磨いていただけますか?その間に、髪を乾かしますので」

殿下は、歯を磨きながら、気持ちよさそうに目を閉じて、髪をいじられている。…だんだん眠くなってこられた様子。そして、ベッドに移動していただいて、背中からマッサージをさせていただく…と、程なく、すぅ~っと寝息が聞こえ始めた。実は、飲み物に安定剤を入れさせていただいた。…今の殿下には睡眠が必要だ。そしてそのまま布団を掛けて、深雪さんに、明日の朝のモーニングコールの時間をメールさせていただく。

そして、医療室へ血液を届けに行き、栄養面については仕官と相談する。

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