2/17 (金) 22:00 付き合うということ

White Ribbon Dayで賑やかだった一週間も、もうすぐ終わる。

つくづく、クリウスの生徒たちはイベント好きだと思う。イベントが近づくとざわめき立って、当日はもちろん最高潮を迎え、翌日以降はその成果を示し合う… だからと言って、深雪ちゃんは特に変わった様子は見せていなかった。多くの場合、イベントの翌日は、プレゼントを身につけてくる生徒が多いのに。そして沢渡は、何をプレゼントしたのか、教えてくれない。逆に何をもらったのかは、聞いてないのに教えられた…。まあ、幸せそうならいいんだ。

の一方で、外国に彼女がいる僕としては、この国の風習をそのまま適用するわけにはいかず、ただ普通の一日を過ごしただけだった。…いや、僕にもファンと名乗る人たちがついてくれるようになって、事務所にプレゼントが贈られてきたり、学校で直接いくつかの頂き物をしたりした。でも、White Ribbon Dayは、基本的には、大切な人とプレゼントを贈り合う日なので、あくまでも、おこぼれというか、洒落というか、見返りは求めない頂き物だった、と思いたい。…勘違いされると困る。

とはいえ、そもそも、彼女と呼んでよいものか?

実は、女の子と付き合うのは初めてだ。コンクールで話したのがきっかけで、それ以来、時々連絡を取り合っているが、直接会ったのは数えるほどしかなく、恋人らしいことも何もしていない。でも彼女に聞くと、僕のことは好きだと言う。…でもそれは、どういう「好き」なのか。きちんと聞くことさえも、怖くてはばかられる。…その時点で、そもそもこれは付き合っていると言えるのかどうか、疑問である。

沢渡の様子を見ていると、深雪ちゃんのおかげでホントに変わったと思う。あの、昔から才色兼備の男が、「彼女がいないと生きられない」とか真顔で言うのだ。しかも陛下や結城さん公認で、疲労回復には深雪ちゃんに会わせること、というのが実践されているとか!

…僕は、沢渡の親友を務めさせてもらっているので、沢渡のいいところも悪いところも見ているけれど、世間のみなさま的な評価としては、沢渡は非の打ち所のない完璧な人間!ということになっているらしい。でも、それは沢渡が外では相当頑張っているからで、本当の彼は、まだ自信がなくて、心身をすり減らしていて、助けを必要としている。そんな姿を、まだ出逢ってから1年も経っていない深雪ちゃんには、すでに見せているらしい。…深雪ちゃんと会うと、気が緩んで眠くなる、とか言っていた。僕だったらやっぱり、彼女にはいいところを見せたい、と思ってしまうけど。

とりあえず、もうすぐ発売になるCDを彼女に贈っておいた。とりあえずは、音楽家としての僕を見てほしい。彼女もまた、ヴァイオリニストとしてのキャリアを始めたところで、尊敬する部分がたくさんある。その上で、お互いにしか分からないような悩みや感覚を、共有できたらいいと思っている。

…でも、これが付き合っていると言えるのか。やはり何度も自問してしまう。とりあえず、今日もまたメッセージを送っておくことにするけど…。

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