3/13 (月) 21:00 殿下の日常

そういうわけで、これから議会の最終週が始まった。結城のことはともかく、僕的にも無事に終了したら深雪と気分よく打ち上げできることには違いないので、頑張っていきたい。

とはいえ、重要な案件についてはすでに審議済みなので、消化試合的な感は否めないが、今後に向けての新たな方針を探る機会にしたいと考えている。また、かねてから担任に頼まれていたように、クリウスや他のの学生が見学に来ることになっているので、広報担当としてもいろいろアピールしておきたい。

それでも、周囲の人間には疲労が色濃く出ているので、緊急事態だけは起こらないように祈るばかりだ。

「殿下、確認していただきたいことがあるのですが」

はい。第一秘書の松本さんが、タブレット片手に僕の席までやって来る。沢渡班は、僕が皇太子に就任してからかなり規模が大きくなったが、今でも松本さんがしっかり取り仕切ってくれているので、それほど混乱は生じなかった。

それにしても、松本さんの指揮能力は的確で、一応僕が責任者になっているが、ほぼ松本さんの仕事を確認するだけの作業になっているのはありがたい。

「承知いたしました」

こういう人のことを、仕事の虫というのだと思う。無駄なく、そつなく、サクッと仕事を片付ける。松本さんが取り乱したりする様子は、いまだに見たことがない。今回の議会が終わったら、それ相応の評価をしてあげよう。

「殿下お時間です」

加藤が呼びに来たので、執務室を出て車に乗り込む。今日は経済界の重鎮との食事会がある。僕が財務長官に就任した当初は、何かと風当たりが強かったが、半年が経ち、議会での成果が認められつつある今では、僕を見下すような人は少なくなってきた。

「殿下が提案された政策の、経済効果を実感している毎日です。比較的余裕がある今だからこそ、普段は時間を割けないこちらの小規模案件にも目を向けていただきたいのですが…」

なるほど。経済が高水準で回っていることにあぐらをかいていない、その姿勢は好印象だ。僕も新たな提案をさせていただこう。

 

そして今日の仕事をすべて終えた帰り道、加藤がそっと口を出した。

「殿下。ご旅行の手配が完了しました。あとは、当日を待つだけですね」

そうなのか!実は深雪の誕生日に、二人で旅行に行こうと予定を立てている。そのせいで、旅行直前にスケジュールが立て込んでしまったと加藤は言っていたが、そんなことは大したことではない。

「ありがとう。楽しみにしているよ」

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