今日は、クリウスの学生たちが議場の見学に来ている。議会は基本的にいつも傍聴可能だが、希望者が多いときには抽選になる。ありがたいことに、今回の議会は毎日のように抽選されているそうで、加えて校外学習の場としての問い合わせも多くなっている。
というわけで、議会が始まる前に時間を設けて、クリウスの学生に議事堂内を案内し、今日の審議内容について少しだけ解説をすることになった。
「まずお手元の資料のAについてですが、なにか質問はありますか？」
担任とも相談の上、今日の参加者には事前に課題を出してある。今回は単なる見学ではなく授業扱いとなっており、参加にあたっては書類選考が行われているそうだ。…したがって、深雪は不参加である。
「沢渡。これは、公平な措置だと言えるのか？一部の企業にとっては、不利益以外の何物でもない気がするんだけど」
. 議場のスタッフが、その言葉遣いにぎょっとしていたが、そこは無礼講ということで。
それにしてもいい着眼点だ。そこで僕は、この案件の問題点について、そして今日これから答弁する予定の内容をざっと説明する。
「ちょっと質問だけど、〇〇ってどうして△△になってるの？」
あっ。
聞かれて気づいた、答弁が若干手薄だということに。そこで松本さんに来てもらい、僕たちはすぐさま検討に入る。その場は一気に戦闘モードになった。
「殿下、そろそろお時間です」
そして、これならいけそうですね、と松本さんとうなずき合う。
「ありがとう。本当に助かった。これから楽しみにしてて」