今日は部活に参加した後、結城が学校に迎えに来た。このまま深雪と、加藤も連れて、外で打ち上げをしようということになっている。
「外で打ち上げとは、意外でした」
感じのよいレストランの個室で、とはいえカジュアルな感じのディナーを頂きながら、結城は終始ご機嫌の様子である。
「ごめん、結城の希望なんだ。議会のせいでずっと宮殿と議場を行き来していたから、外の空気を吸いたいんだって」
「その場に、私がいてもいいんですか?」
「これまた、結城の希望なんだ。…ねえ、何か言ったら?」
結城の要望を叶えてあげているのに、沈黙とはいただけない。
「職場の打ち上げは昨日のうちに済ませているから、俺たちのことは気にしなくていい。むしろ、今回の議会が無事に終わったのは、深雪ちゃんの献身のおかげなので、お礼をしたいと思って」
「そうです。私からもお礼を申し上げます。深雪さんのお陰で、殿下は朝からご機嫌が麗しく、非常に助かりました。ありがとうございます」
いえいえ、そんな…。と深雪は真っ赤になってうつむいている。
「俺からもお礼を言いたいけど、それは深雪の誕生日の時にたっぷりね。それでも、ホントに助かっているのは事実。ありがとう」
大の男三人が、一斉にお辞儀をするものだから、深雪は完全に固まってしまっている。
「でもこれじゃあ、深雪を困らせているだけじゃないか。もっと、喜びそうなことをしてあげようよ」
そうだな、と結城が一旦席を外して、ラッピングされた包みを持ってきた。
「深雪ちゃんの誕生日は二人で過ごしたほうがいいと思うから、俺からのプレゼントは今渡しておく。ちょっと早いけど、誕生日おめでとう」
開けていいんですか?と遠慮がちに聞く。僕も、何かは聞いていない。
「うわ」
そして出てきたのは、フォーマルなハンドバッグだった。
「それが似合うようなドレスは、多分沢渡が見繕ってくれると思うから任せておくけど… これからも沢渡のことをよろしくお願いします。時々は、デートの時に俺も混ぜてくれると嬉しい」
コラコラコラ!何をアピールしているんだ。
「そんなこと言うと、これからは同席させないよ」
「待て。俺は深雪ちゃんに聞いているんだ」
「その聞き方は反則だ。それじゃあ、断れないだろ!」
「待ってください!」
たまりかねて、深雪が口を挟んだ。
「あの、凄く嬉しいです。早く、このバッグが似合うようになりたい。そんな長い目で見てくれているなんて嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします」
あぁー。まったく、結城の手に乗るんじゃなかった。僕が個人的に女装を披露したほうが、まだマシだったかもしれない。