12/24 (土) 22:30 招待

言われてみるとそうだ。これまで離れている時間が多かったのに、最期を一緒に迎えられるなんて、これほど幸せなことはない。今日も、以前仕事でお世話になった方とお会いした。

「こうなったらいっそ、こちらから挨拶に伺おうか」

「それはやめようよ。あくまでもごく自然に振る舞って、周りの反応を楽しむほうが貴くんらしいと思うけど?」

「でも心配だよ。これから議会も始まるわけだし・・・、それが来るのはやっぱり今度の旅行のときなのかな?それとももっと遠い未来のことなのかな?」

「それは分からない・・・。分からないからこそ、これまで通りに生活すればいいと思うのよ」

なるほど・・・。そうだよね。誰にでも、そしてどこにいても、死は必ず訪れるものだ。僕が雪の中での死を迎える前に、明日交通事故に遭うかもしれない。それどころか、今日地震が起きるかもしれない。でもその心配をしてみてもしょうがない。余計な心配をして残り少ないかもしれない時間を無駄にするよりも、一日一日を自分たちのために大事に使うほうがいい。

「舞は、何かしておきたいことはある?」

「しておきたいことねえ・・・」

隣に腰掛けてお茶を飲んでいた舞は、う~んと考え込んだ。・・・考え込まなければ出てこないのか。

「そうねえ・・・やっぱり一緒にいたいかな?長い年月をかけて少しずつ一緒にいる時間を増やしていこうと思っていたけど、あまり時間がないのだとしたら、遠慮しないで貴くんを占有したい」

おっと、これは大胆発言だね。

「普段の貴くんだけでなく、皇太子としての貴くんも、笑顔のときも、怒っているときも、疲れているときも、寝ているときも全部、目に焼き付けておきたい。そしてできれば一緒に感じ合いたい」

「じゃ、愛し合いましょうか?」

何よその言い方は!とばかりに、もう、と隣から小突かれた。

「どうして僕たちは、ロマンティックなムードになれないのかな?一応僕は外では皇太子らしいんだけど・・・」

「それはこれとは別でしょうが。・・・自業自得でしょ?」

しょうがないな、では特別に。・・・彼女の側に跪いて手を取る。

「僕があなたを、極上の世界へと招待いたしましょう」

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