1/8 (日) 15:00 未来は誰の手にある?

“Taka、Mai、改めて結婚おめでとう!”

おいしいワインを持って来てくれたヘンケルを、舞と僕は手料理で迎えてあげた。

“ありがとう”

“随分、素直だね。何かあった?”

ヘンケルにまでいきなり聞かれて、思わず言葉に詰まる。

“ヘンケル、ちょっと散歩に行かないか?”

“え?Maiは一緒じゃないの?”

いいから、とヘンケルを促して、二人で近くの川辺に行く。

“悪い予感にさいなまれて、どうしようもない。…だから、君には会っておかないと、と思って”

“どうしたんだよ、Takaらしくない。今、幸せいっぱいじゃないの?”

やむを得ず、ヘンケルにこれまでの経緯を話す。最初は、冗談だと言わんばかりに笑いながら聞いていたヘンケルだったが、やがて黙って話に耳を傾けるようになった。

“でもそれは、僕の身に起こることかもしれないし、ただの気のせいかもしれないし。いずれにせよ、話してくれてありがとう。大事なことを相談してくれる相手に僕を選んでくれて、本当に嬉しいよ”

血筋とは関係なく皇太子になった僕への風当たりは相当なもので、最初はいろいろと嫌がらせをされた。それにもかかわらず親しくしてくれたのはヘンケルで、それ以来ずっと親しくしている。…悪友と呼び合うくらいに。

“どういうわけか、僕には確信を伴う事実にしか感じられないんだよ。だから、他のことが何も手につかない。今までどんな不測の事態にも対処できるように、危機管理に努めてきたのに、そんなことどうでもよくなってしまって…”

言うと、ヘンケルはきつく僕を抱き締めてきた。

“僕はそんなこと信じない。Takaがいないとつまらないよ。…そんなの、現実になったりしないよ”

あ…。何故か今まで、話してみても冷静に受け止めてくれる人ばかりだった。だから、こんなに取り乱してくれたのは、ヘンケルが初めてだ…。

“絶対に、Takaを逝かせたりしない。まだまだ遊び足りないよ。連れて行きたいところもいろいろあるし”

そうだよね、まだやりたいことは他にもたくさんある。僕たちの子どもの顔を見たい。沢渡くんが、立派に仕事を務め上げるところも見たい…。

“まだ死ぬわけにはいかないよね。先のことなんて、まだ分からないよね…”

“そうだよ。まだ僕たちは、夢の途中なんだから。…一緒に、平和な世界を作るって約束したじゃないか”

そうだ。これまでにも、いくつもの困難を乗り越えてきた。まだ分からない。未来は変えられる。泣いたらかなりスッキリして、、早く舞の元に戻りたくなった。

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