新しい年度の始まり・・・。
僕はこれから行われる入宮式に出席するべく、正装に身を包み、鏡で最終チェックをしていた。
「殿下、まもなくお時間ですがよろしいでしょうか?」
加藤が迎えに来てくれたので、いいよ、と振り返る。
「素敵ですね。私は、殿下にお仕えすることができて光栄です。本年度も、どうぞよろしくお願いいたします」
なに?どうしたの?
「いえ。自然とそう申し上げたくなったのです。突然のことではありましたが、今や殿下とお呼びするのにふさわしい方になられました。新入宮者に向けて、存分に示しをおつけください」
普段誰よりも一緒にいる時間が長い加藤から、改めてそんなことを言われると、こちらとしても気が引き締まる。羽目を外さないようにと釘を差しているのだろうけど、言われて悪い気はしない。
「こちらこそ、至らないところばかりですが、これからもよろしくお願いいたします」
そして、僕が深々と頭を下げたものだから、加藤が慌てて僕の体を起こそうとする。
「殿下、おやめください!」
「いや、別に冗談で言っているわけではないよ。僕は本当に加藤なしでは生きられないから、いつも感謝してる。今年もビシバシしごいてね」
あ… と、加藤がそっと赤面し始めたので、僕は言ってあげた。
「あのね、僕は演劇部なんだよ。騙されちゃダメだよ」
「ちょっと殿下!」
今度は怒りで顔をさらに赤くしたけど、加藤に感謝しているのは本当だ。本年度もどうぞよろしくお願いします。