高校3年生になって進路を考えている時に、貴くんのもとへ招宮の文書が届いた。彼はいつ勉強していたのか私もよく知らなかったけれど成績は大体1位で、しかも生徒会長だったから、当然と言えば当然だった。それを彼は素直に喜んで、入宮試験に向けての勉強を始めた。そして私も、小学校の先生になりたいという夢を叶えるために、受験勉強を始めた。・・・結果は二人とも合格。新しい生活にそれぞれ胸を膨らませていた。
しかしそんな時に、貴くんから分厚い封筒が届いた。
”これからどんな生活を送ることになるのか想像もつかないが、宮殿での生活が始まるとなかなか家には帰れなくなるという話だ。・・・次はいつ会えるか分からない。約束しても守れないかもしれない。そんな状況では、お互いのためによくないと思う。
僕はこの仕事にすべてを賭けてみたい。今まで本当にありがとう。舞とのたくさんの思い出を僕は決して忘れたりはしない”
・・・だなんて、どうしていきなり過去形になっているのよ!と、私はその手紙をつかんだまま家を飛び出した。入宮するのは今日だったはず・・・一方的にこんなものを送り付けて、何も言わずに行ってしまうわけ?
私は彼の家を目指した、が、正確な場所は知らなかった。何回かは行ったことがあったけれど、いつも車で送ってもらっていたから・・・でも電話をしても出てくれそうにない・・・案の定。でも、このまま会えないなんて辛すぎるから、何度も何度もかけた。
“はい”
「今どこよ」
“今から行くところ”
「じゃあまだ家なのね。でも貴くんの家ってどこよ!」
さすがに彼も放っておけなくなったらしく、時間がないのに探しに来てくれた。
「いくら長い手紙を書いたって、あなたの想いは伝わらないわ。・・・私は待ってる。何があっても待ってる。何年かかってもいいから、もし時間ができたら連絡して」
「でも・・・」
「私、貴くんじゃなきゃダメなの」
「舞・・・」
同じ首都に住んでいるのに、これで永遠の別れだなんて絶対に嫌だった。
「分かった。また連絡するよ」
その言葉がないと私は帰れない・・・。貴くんは最初は明らかに困ったような表情をしていたけれど、別れ際はいつもの笑顔に戻っていてくれた。