今日は朝から車寄せに立って、学校に来る人の車のドアを開けた。兼古先輩は面白いことを考えるね。
ということで、今週の部活はほとんど、兼古先輩の応援のための打ち合わせに時間を割いている。新しい部長は清水先輩･･･これにはみんな納得、そして兼古先輩の応援も、みんな楽しんでやっている。
３年生が引退してから雰囲気が明るくなったような気がするのは、私だけじゃないと思う。普通は１年生と２年生はあまり仲がよくなかったりするみたいだけど、兼古先輩がいるだけで全然違う。基本的にはすべて清水先輩に任せているみたいだけど、何かあったときのフォローが上手･･･正義の味方みたいな人。沢渡くんのことも助けていたし、私も、文化祭のための練習では助けてもらった。見ていないようで見ている人･･･。器が大きい人･･･。
それでも清水先輩はあれこれ考えていたみたいで、今日は今後の方針についての発表があった。
「私たちが目指すのは、全国大会での優勝です。でも、今の段階ではまだ基礎が固まっていないので、これからしばらく、演劇についてもっと理解して、自分の可能性を広げてもらいたいと思います。そのために、演劇に限らずあらゆる芸術に触れる機会をもっと増やします。そして、目安としては月に一度、短編を仕上げます。そこであらゆるタイプの役に挑戦してもらって、春にはそのうちの一つを上演する機会を持ちたいと思っています。そして、地区予選、全国大会に臨む予定です」
･･･凄い。そこまで細かく計画を立てていたなんて。楽しみになってきた。
「とりあえず、10月末に仕上げたい作品の台本を配ります」
うわ～、出来ているんだ･･･。見てみるとそこには、友情をテーマにした話が書かれていた。私の役は･･･友情より、彼氏を選んでしまう女の子。高校生くらいだとよくある話だね。ちなみに兼古先輩は沢渡くんとの友情を優先するタイプ、沢渡くんは兼古先輩と朝霧くんとの友情で揺れるタイプ、朝霧くんは私の彼氏役、沙紀は私の友達役。なかなかよく出来ている気がする。朝霧くんが彼氏か･･･。
とりあえず今日は本読み。今回は兼古先輩とお近づきになるチャンスはなさそうだね･･･。
「ねえ、ついでに朝霧くんのことをリサーチしてよ」
沙紀が真顔で言う。･･･それ、何か違うんじゃない？確かに、以前ビデオドラマを撮影したときには沢渡くんにいろいろ聞いてみた。でも今回はあまり気が進まないのは、どうして･･･？