一方沙紀も、告白が受け入れられたのにうまくはいっていないみたい。
「朝霧くんって、ホントにヴァイオリン命みたい。それだけのために生きてるって感じ」
それほどまでに・・・。学校では全然そんな様子は見せていないから、信じられない。でも確かに、朝霧くんは私たちと話していてもいつも聞き役に回っていて、私たちの発言に対して意見するくらいしかしない。
「でも、いいじゃない。沙紀はおしゃべりなほうだし、話を聞いてもらえるなら」
「そうなんだけど、デートに行くとなってもまず場所からして決まらなさそうで」
「あれ?まだデートしてないの?」
「この間の週末は忙しかったみたいで・・・」
だったらしょうがない。それに行ってみないことには分からないじゃない。
「まゆは、どんなデートをしてる?」
え?・・・この状況で聞かれると、答えにくいな。
「でも、私たちは私たち、沙紀は沙紀だよ。・・・理想のデートはどんなの?」
「遊園地に行きたいな。ジェットコースターに乗りたい」
・・・朝霧くんにはジェットコースターのイメージはないかも。
「でも、行きたいところがあるなら言ってみればいいじゃない。どうなるかはそれからまた考えればいいことで」
「そうなんだけど・・・。確かにね、カッコイイし、一緒にいると楽しいよ。ヴァイオリンも凄くいい!でもね、ずっと話をしないわけにはいかないじゃない。ネタに困るのよ」
「え?でも、一緒にいると楽しいんでしょ?朝霧くんのほうも、あまり話をしなくても平気なタチなんじゃないかな?」
「それじゃあ、私が困るのよ。・・・だって沢渡くんとは、いつも楽しそうに話をしてるじゃない。何話してるんだろ?」
「男同士の話はまた別だよ。沙紀は、沢渡くんみたいにならなくてもいいの」
まあ、そうなんだけど・・・、と沙紀はすっかりおとなしくなってしまった。でもなかなか言えないよね、私だって先輩に、あんまり束縛しないでください、なんて言えない・・・。ましてや、付き合い初めだと・・・。
でも正直、私は沢渡くんや朝霧くんとは関わりたくない。凄く気まずいの・・・。どうしても必要なことならしょうがないけど、そうでないときにはどんな顔をして話せばいいのか分からないのよね・・・。