先輩は怖いくらいに微笑んでいた。私は先輩の家に連れて行かれ一緒にDVDを観ることになったのだけど、集中できるわけがない。
「どうしたの?・・・面白くない?」
「いえ・・・そういうわけでは・・・」
「だったら、こっちに来てもっと楽しんで」
・・・ずっと観たかった映画なので楽しみだったんだけど、とても笑える感じではない。
「最近、笑わなくなったね」
・・・そうさせているのは先輩です。・・・でもそんなこと言えません。
「どうして?」
・・・言うべき?
「先輩の気持ちが重いんです。・・・私じゃ先輩の気持ちに応えられません」
「どうしてそういうこと言うのかな?僕はただ、まゆと一緒にいたいだけなんだよ」
先輩の腕が伸びてきて、私を抱きとめる。
「まゆは・・・僕のものだけよね・・・」
私はものではありません・・・。でも、先輩に抱きしめられていると、このまま時が止まればいいのに・・・と思ってしまう。好きだけじゃダメなの?私は多くを求めすぎているのかな?
「悲しい顔をしないで。・・・僕が慰めてあげる」
優しい優しいキスをしながら、先輩がゆっくりと覆いかぶさってくる。
そう、私のことを愛してくれるのは先輩しかいない。みんな私のことを心配してくれるけど、それは所詮、友達だとか先輩という立場からでしかない。・・・私は寂しいのよ。
好きな人から愛してもらえない、こんな不幸なことって他にある?他のどんなものもそれを埋めてはくれない。でもほんの一瞬でもそれを忘れさせてくれるのなら・・・私はその波に溺れていたい。
「愛してるよ」
愛してもらいたい。・・・一度でいいから、その言葉を彼の口から聞いてみたい。