部長には、前日メールで伝えておいた。すぐさま驚いたように電話がかかってきたけれど、私の意志は変わらなかった。
朝学校に行くと、部長が玄関で私を待っていた。
「上柳さん、気持ちは変わらないの?」
「はい。みなさんに迷惑をかけるのは本当に申し訳ないと思っていますけど、このままでは今後もっと迷惑をかけることになりそうなので、先に失礼します。今までありがとうございました」
「上柳さん、迷惑だなんて・・・」
まさか玄関で待っていてくれるとは思わなかったから動揺したけれど、こう言うしかない。
・・・でも部長はそれ以上何も聞かなかった。出来れば、部長にはこれからもいろいろ相談に乗ってもらいたかったけど、しょうがない。・・・それもだけど、まだ沙紀に話していなかった。
「うそ~、どうして?」
そう言うのも無理はない。でも、慌てて沢渡くんや朝霧くんを呼ぼうとしたから、それは止めた。
「私の口から言いたくない。すべては部長にお願いしたから、沙紀もそれまでは黙ってて」
「でも・・・。まゆが抜けちゃったら、今度の作品はどうなっちゃうのよ」
「それも部長にお願いしたから・・・。ホントにゴメン。でも私にはもう、耐えられないのよ」
言うと、沙紀の視線が、沢渡くんのほうに流れていくのが見えた。
「まゆも辛いのね・・・。分かったよ。部活は違っても、ずっと友達だからね」
うん、ありがとう。その気持ちがとても嬉しかった。
放課後、生徒会長選挙の結果が発表されて、兼古先輩が見事に当選を果たした。・・・その放送が流れた瞬間、沢渡くんは、よし、とばかりにガッツポーズを見せていた。
でも私はもう、今日のところは学校に用はない。そのまま荷物をまとめて生徒玄関に行くと、先輩が待っていてくれた。
「今日はどこに行きたい?」
「秋のデザートを食べたいです」
「分かった、じゃあ乗って」
先輩は車のドアを開けて私をエスコートしてくれる。・・・これでいいのよ。